【ボランティア活動の勧め】 徳増 浩司さん

徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
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◆ラグビーW杯成功の鍵

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開催が2年後に迫り、6月には熊本などW杯本番の会場で日本代表戦も実施された。キャンプ地の選定もヤマ場に入っている。そんな折、最近は大学から「ラグビーW杯でのボランティア活動」について、講演を依頼されることが増えてきた。

 先日は東京外国語大学にお招きを受けた。世界26もの外国語が学べる同大学では、国際大会での通訳ボランティアへの関心が高く、まなざしは真剣だった。ラグビーW杯では通訳のみならず1万人を超えるボランティアが必要で、大会成功の鍵を握る重要な存在だ。日本大会の組織委員会は来春、全国からの募集を開始する予定だ。来夏には面接を終え、採否を決めて研修に入る流れになっている。

 私も何度かラグビーW杯を訪れてきたが、空港で最初に出迎えてくれるのは現地のボランティアだ。「ようこそわが国へ!」と包み込む彼らの笑顔や立ち居振る舞いは、その国の第一印象となり、最終的にはその国のイメージとして定着する。私はいつも、なぜ強いインパクトを受けるのか不思議だったが、それは決して金銭的報酬のためではなく、心からその国を好きになってもらおうとする純粋なボランティア精神からくるものだと思うようになってきた。

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 ボランティアの語源は「意思・善意」という意味を表すラテン語のボランタス。ボランティア活動とは「自発的に、他者や社会のために、金銭的な利益を求めずに行われる活動」と定義されている(東京ボランティア・市民活動センターの資料より)。東日本大震災や熊本や大分での震災でも多くのボランティアが活動し、最近も、甚大な被害をもたらした九州豪雨で早速、有志の動きが始まっている。

 私自身が初めてボランティア活動に参加したのは、大学在学中だった。児童養護施設でペンキを塗る仕事で、子どもたちとも交流した。家庭崩壊の実情や、広く児童福祉問題にも接することができた。施設の子どもたちにラグビーを教えることもできた。

 沖縄の児童養護施設でのボランティア活動にも参加した。1971年夏、施政権が米国から日本に返還される前年の沖縄。鹿児島から船に丸1日乗って那覇に到着して見たのは、右側通行の車であり、通貨がドルだったことだ。休日に沖縄北端まで行くと、米国のヘリコプターが鹿児島の与論島との間を監視していた。私はその後、沖縄問題に対して強い関心を持つことになった。

 英国在住時も貴重な体験をした。夏休みに親が留守の日中、小学校で子どもたちの遊び相手をする学童保育のボランティアだった。子どもたちと別れた夜は、ボランティアの学生と一緒に校庭でテント生活をした。そこでは、同年代の英国青年たちとの交流が価値あるものだった。日本人の私が、英国社会の日常に飛び込んでいく体験だった。

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 ボランティア活動の価値は、自分の意志で自発的に社会問題に取り組むところにある。「役に立ちたい」という自発的な気持ちは、時として行政や民間企業を超える力となる。また、様々な活動を通じ、普段とは異なる状況の中で、現実問題に対して主体的に関わることができる。これこそが、金銭では得られない価値であり、経験であるともいえる。

 ボランティア活動への絶好の「入り口」になる2年後のラグビーW杯も、熱意と行動力に支えられることは間違いない。だが、それを待つまでもなく、身の回りのどんな小さなきっかけでもいい。まず一歩を踏み出してみよう。必ずや参加した人の宝物となって一生輝き続けるに違いない。

 【略歴】1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率いて全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務、2015年にアジアラグビー会長就任。


=2017/07/16付 西日本新聞朝刊=

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