【アジア初のラグビーW杯】 徳増 浩司さん

徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
写真を見る

◆交流促進が日本の使命

 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開幕まで2年を切り、試合日程も発表された。W杯が足音を立てて近づく11月下旬、香港で開催されたアジアラグビーの年次総会で私は会長を退任し、2年間の任期を終えた。もう1期続投してはとの声もあったが、W杯では、むしろ受け入れ側の立場からアジアのみなさんを日本にお迎えしたい考えもあり、退任を決めた。今後は名誉会長という形で、アジアと日本の懸け橋の役割を果たすことになる。

 この2年間の活動を振り返ってみると、あらためて「アジア」という地域の広大さとその多様性に驚かされた。日本が属する東アジアから、ずっと西へ大陸を横断し、ヨルダンやシリアが属する西アジアまで50を超える国家や地域をカバーし、ほとんどの国が独自の言語を持っている。宗教においても、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教など多様だ。また、世界の人口ランキング上位10カ国のうち、アジアが6カ国を占めるなど世界人口の過半数を占める地域でもある。

   ---◆---

 実は、ラグビーW杯日本大会の実現にはアジア諸国のうれしい後押しがあった。忘れもしないのが、05年冬にパキスタンで行われたアジアラグビー理事会だ。日本はその年の秋に11年W杯の招致争いでニュージーランドに敗れたばかりで私たちはすっかり意気消沈していた。だが、招致が実現しなかったことを同会議で報告した際に突然ブルネイの代表が立ち上がってこう言った。「いや、ぜひもう一度やろう。アジアで初めてのW杯を日本でやるために、アジアのみんなで力を合わせて協力しようじゃないか」

 その発言をきっかけに、「アジアにW杯を持ってくる」ことがアジアラグビーのミッション(使命)の一つになった。そして、4年後に19年W杯の招致に取り組んだ時には、アジアの20カ国を超える協会の会長が支援のレターを書いてくれ、それを招致ファイルに添付した。招致のテーマはまさに「アジアのための招致」というものだった。

 「アジアでのW杯開催こそはラグビーを真のグローバルスポーツにする」というアピールは、やがてワールドラグビー理事の心を打ち、09年7月に日本開催が決定した。あれから8年。今や、アジア地域は世界で最も普及活動の盛んな地域になっている。

 私の会長任期中にも、W杯のレガシー(遺産)活動として「アジア・ワンミリオン・プロジェクト」を立ち上げることができ、20年までにアジアの競技人口を新たに100万人増やす取り組みを始めている。

   ---◆---

 この数年、国際協力機構(JICA)を通じて青年海外協力隊のみなさんがアジア各地でラグビーの普及活動に従事していることにも注目したい。現在も、インド、スリランカ、キルギス、インドネシアで活躍中だが、彼らこそは、「日本のアジア貢献」を象徴する存在だ。青年海外協力隊が現地で特に高く評価されているのは、派遣国の言語を事前に学び、使えるレベルになって現地入りする点にもある。多様な言語を持ったアジア地域では特に大切だ。こうやってアジア各地で日本の存在感がどんどん高まる中、19年のW杯がやってくる。

 九州地区では、三つの試合会場で10試合が行われ、複数のキャンプ地も予
定されている。今から12年前、パキスタンの地でこのW杯日本大会の実現を切望したアジア諸国の夢に応えるためにも、アジアからわが国を訪問する人たちと地域との交流の機会をつくり、その活動を継続させていくことこそが、私たちW杯に関わる者に課せられた使命の一つと考えている。

 【略歴】1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率いて全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務、アジアラグビー会長を2017年退任。


=2017/12/10付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]