【コミュニティーづくり】 徳増 浩司さん

徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
徳増 浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐
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◆ラグビーW杯機に加速

 数々のドラマや感動を生んだ平昌冬季五輪。スポーツの持っている力を再認識させてくれた大会だったといえよう。次の夏季五輪は2年後の東京、その前年にはラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会と、世界三大スポーツイベントが次々とやってくる。

 ラグビーW杯日本大会は、1月に入場券の先行抽選受け付けが始まり、「いよいよ」という実感が湧いてきた。大会が近づくにつれ、筆者の周りでも、少しずつ変化が起きている。それは、さまざまな「コミュニティーづくり」という形で表れてきている。

 そもそもコミュニティーとは何か? コミュニティーデザインを専門とする山崎亮氏(東北芸術工科大教授)によると「一緒に任務を遂行しようとする人の集まり」となる。ラグビーW杯日本大会という共通テーマに向かって、市民・企業・行政が、いろいろな分野で動き始めている。

 いくつかの事例を挙げよう。昨秋、東京都内の私鉄会社の若手社員たちが自主的に集まって「ラグビーW杯に対して自分たちには何ができるか」を話し合った。その結果、新宿西口エリア活性化のために新宿中央公園を使った新たなラグビーイベントを導入しようというアイデアが生まれた。今までラグビーとは全く縁のなかった人たちが、ラグビーW杯をきっかけに地域活性化への新たなコミュニティー活動を始めた好例だ。

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 筆者自身も、新たなコミュニティーづくりを始めた。都内にあるインターナショナルスクールの子どもたちを集め、日本の子どもたちと一緒にラグビーを楽しむ『英語でラグビー』教室の開催だ。W杯観戦で来日する外国人サポーターらとの国際交流も視野に入れ「パス」「キャッチ」などの簡単な単語を使って、少しずつラグビーと英語に親しむことを目的としている。

 グラウンドの確保に苦慮していたが、前述の私鉄若手のコミュニティーとつながり、新宿中央公園での開催が実現した。さらに国際交流に積極的な静岡県袋井市からの呼び掛けもあり、W杯会場の一つであるエコパスタジアムでも開催。市内から小学生男女45人が集まった。

 このように一つの小さなコミュニティーが、市民・民間・行政の枠を超えて少しずつ新たな大きなコミュニティーへつながっていく。

 九州ではさらに大きな構想もある。西日本新聞で報道されたものだが、今秋、福岡県でアジアの子どもたちや指導者を招く国際イベント「アジアラグビー交流フェスタ」(仮称)を開催する計画だ。W杯会場の熊本、大分両県など国内からも30チーム程度を招き、「九州エリア」を縦断するばかりでなく、アジアをも巻き込むという壮大さ。九州とアジアの交流という点でも国際的意義は計り知れない。

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 ラグビーW杯や東京五輪・パラリンピック開催を契機にこれからも全国でいろいろなコミュニティーが生まれてくるだろう。きっかけは「みんなで何か面白いことをやってみよう」というぐらいの気楽な気持ちでいい。まずは小さな一歩を踏み出すことが大切だ。新たなコミュニティーを立ち上げることにより、人と人との新しいつながりが確実に生まれていく。

 人口減少や高齢化が進む日本社会。地方では集落の維持が難しくなり、都心ではコミュニケーションの脆弱(ぜいじゃく)化による社会問題も生まれている。しかし、各地で起きるささやかなコミュニティーづくりを育成・共存させることに、地域活性化の新しい可能性がある。そして、そこでつくられたコミュニティーは、大きな国際大会が終了した後も、必ずや自分や地域の中で大切な財産として残るはずだ。

 【略歴】1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率いて全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務、アジアラグビー会長を2017年退任。

=2018/02/25付 西日本新聞朝刊=

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