【高齢者施設と地域】 関根 千佳さん

関根 千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長 同志社大客員教授
関根 千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長 同志社大客員教授
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◆「役割」担う場に開こう

 母が福岡市内の高齢者施設に入って半年がたった。服薬管理や食事が規則正しくなったことで、かなり元気を取り戻したようだ。スタッフのみなさんは本当によく動いてくださる。介護の仕事が正しく評価され、若い人が希望を持って働けるような待遇になってほしいと、いつも思う。

 自分が歳をとった時、入りたい施設とは? 米国で見てきたCCRC(ケア付きリタイアメント・コミュニティー)では、高齢者が自分で企画し、運営するさまざまなプログラムに驚いた。大学と連携したり、図書館を活用したりで、うらやましかったものだった。

 日本でも、すてきなユニバーサルデザイン(UD)の取り組みが増えてきている。石川県のシェア金沢のように、高齢者施設に学童保育や学生アパートが併設されているのは楽しそうだ。地域住民は温泉札で施設内の温泉に自由に入れるし、カフェでランチを食べて地物野菜を買って帰れる。ここは「佛子園(ぶっしえん)」という障害者の就労施設が広がったもので、園内のアルパカのお世話は障害者の仕事だ。

 愛知県のゴジカラ村は「もりのようちえん」を中心に、看護専門学校や高齢者施設が森の中に点在する。高齢者が昼間過ごす古民家では、乳幼児が遊んでいる。子どものおしめを替えたりお茶を飲ませたりする高齢者は楽しそうだ。若いお母さんたちは、赤ちゃんをおんぶしながらここで働いている。調理室では地元の障害者が手伝う。

 福岡にも「しかたの茶の間」のように、小規模多機能の隣にコミュニティースペースを作り、学習会や相談会を開いているUDな場所がある。

    ◆   ◆

 これからの高齢者施設は、もっともっと地域に開かれて、コミュニティーの核になっていくことが望ましい。

 施設に高齢者自身が持ち込んだ本が、町の図書館の役割を持つ。子どもも学生もそこで本を読み、勉強できる。夜は食堂に地域の人が集まって(できればお酒を飲みながら)地域の課題を議論する。日中は地域の学びの場として、さまざまな講習会やイベントを開催する。

 そこでは、入居者自身が、ときどき主役になる。子どもたちに勉強を教えたり、イベントを主催する側になったりもできる。どんな小さなことでもいいから、そこでの「役割」を持つことが重要だ。

 このような活動は、地域住民の出番である。ゴジカラ村には(昔取った)「きねづかシェアリング」というボランティアグループがある。施設と地域を結び、入居者と子どもをつなぎ、自分たちの生きがいにもなっている。

 海外のCCRCでは、ボランティアコーディネーターが常駐し、入居者とボランティアのマッチングをしていた。介護は専門スタッフに任せ、高齢者の生活の質(QOL)の部分は市民ボランティアが担うのである。

    ◆   ◆

 人生の最終章を過ごす終(つい)の棲家(すみか)だからこそ、高齢者自身がなんらかの役割を持ち、自分の人生を語れる場を持つことが必要だ。それぞれの人生とその物語を、年に1度、語ってもらう日を設けてはどうだろうか。

 私の母は、自分が作った木目込人形について写真で紹介する会を、施設の協力で毎月開いている。人形の話になると、がぜん元気になるのだ。前回は九州国立博物館に常設展示している人形を題材にした。次回は11月4日に、平安時代の人形について話す予定だ。このような場が地域に開かれていき、地域の方にも施設や入居者を知っていただく機会が増えることを願う。

 それは地域の社会資本を増し、非常時の共助にも有益であると思っている。

 【略歴】1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

=2018/10/22付 西日本新聞朝刊=

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