【メリークリスマス!】 関根 千佳さん

関根 千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長 同志社大客員教授
関根 千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長 同志社大客員教授
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◆世界の幸せを祈りたい

 この頃、子どもや若い人が、とても愛(いと)おしく思える。電車やバスの中に子どもの姿があると、それだけで嬉(うれ)しい。泣いている子どもにも、親御さんにも「大丈夫だよ」と微(ほほ)笑みかけたくなる。前の席に座った子どもと目が合うと、「ベロベロバー!」としたくなる。あやしているんじゃなくて、アヤシイ人と思われるだけかもしれないが。

 以前は、特に乳幼児が可愛(かわい)かった。赤ちゃんを見ると、それだけで幸せ物質が体内に満ちる気がしていた。子どもは、その存在そのもので人を幸せにする。歳(とし)を重ねるうちに、小学生も中高生も可愛くなっていき、今では大学生も、20代の若者も、みんな愛おしく思えてしまう。

 「どうか元気でいてね」「幸せな人生を歩んでね」と祈らずにはいられない。

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 先日、京都市の地下鉄で、女子大生が楽しそうに会話していた。どうやら、クリスマスパーティーのケーキをカタログから選んでいるようだ。

 「ねえねえ、このチョコレートケーキ、すてき!」

 「うーん、でも、ブッシュドノエルに憧れる!」

 「いやいや、やっぱりクリスマスはイチゴのショートケーキでしょ!」

 あまりにも楽しそうで、つい、こちらも笑顔になってしまう。

 今夜はクリスマスイブ。どうか、君たちの夜が楽しいものでありますように。

 メリークリスマス。その年のクリスマスは、一生に一度きりなんだからね。

 すてきな聖夜が、人生の中で明るい思い出になってほしい。これからの長い道のりでは、悲しいときも、寒い夜もあるだろう。でも、楽しかったその日の思い出が、人生の中で、1本のろうそくのように、嵐の夜の灯台のように、温かな光をもたらしてくれるかもしれないよ。

 そう思いながら、ふと気づく。こんな風に自分たちも、全く見知らぬ誰かに「幸せにね」と祈りを贈られてきたのだということを。

 子どものころ、まだ若かったころ、きっと、すれ違う誰かに、小さなエールを送られながら、生きてきた。

 「幸せにね」「元気でね」「楽しい日々を過ごせますように」

 子どもたちも、若者も、気づかないだろう。それでいいのだ。きっと、これも順送りなのだから。

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 歳をとって、思うようにいかないことが多くなっても、誰か他の人の幸せを祈る力があれば、私たちは、この地上に生きている意味があるのではなかろうか。子どもたちや若者は、周りの人を幸せにすることができる。高齢者も、障害のある人も、世界の全ての人が、存在することに価値がある。なぜなら、祈る力を持っているからだ。

 誰かの幸せを祈ることで、世界が少しでも明るく、温かくなれば、その人の存在は価値を持つ。人の幸せを祈ることは、幸せ物質を増やし、自分自身の幸福感に資するという脳科学の報告もある。

 一人一人はとても無力だけど、それでも、誰かの幸せを願うことならできると信じたい。それは特に宗教にかかわらなくてもいいはずだ。クリスマスをケーキで祝い、年末にはお寺で除夜の鐘を撞(つ)き、初日の出に手を合わせ、神社に初詣に行く私であるが、祈りになるのなら、悪くないと考えよう。

 だから、せめて聖夜や新年には、皆で祈りたい。世界が少しでも良くなりますように。子どもも若者もシニアも、皆が楽しい時を過ごせますように。あなたが、この世の全ての人々が、幸せでありますように。

 平成最後のメリークリスマス。そして、良いお年を。

 【略歴】1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

=2018/12/24付 西日本新聞朝刊=

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