【ビロードの手袋に鉄の拳を】松田 美幸さん

松田 美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長
松田 美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長
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◆「未来の声」と向き合う

 「真の力は、人々のもの」と15歳のグレタ・トゥーンベリさんはスピーチを締めくくった。昨年12月、ポーランドで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)で、世界のリーダーたちに向けて語ったスウェーデンの少女。気候変動対策に対する強い危機感を訴える彼女は、あまりにも率直で毅然(きぜん)としていた。

 昨年9月のスウェーデン総選挙直前、グレタさんは2週間、学校に行かずに「気候変動のためのストライキ」と書いたポスターと共に国会前で座り込みをした。童話の長くつ下のピッピに登場しそうなお下げ髪の少女が座り続ける姿が、国内外で大きく報道された。選挙権も被選挙権もない彼女が、政治家や世論に対して影響を与えるために取った行動はシンプルだが波紋は大きかった。

 彼女の行動は国を越えて同世代を動かし、昨年11月、オーストラリアの小中高校生たちが、気候変動対策を促進する政策への転換を政府に要求し、国内各地で行進を行った。首相をはじめとする政府の要人は、行進に参加せず学校に行くよう呼びかけたが、参加者たちは「大人が何もしないから、授業を犠牲にしてでも私たちが訴える事態になったのに」と答えたのだ。

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 インスタグラム時代はデモ行進の様相も変わってきている。女性の人権尊重を掲げる新たな運動として、一昨年アメリカから広がったウィメンズマーチが象徴的だ。カラフルな服装、ユーモアや皮肉のきいたポスターなど、楽しいお祭りのような雰囲気だ。ただその奥には、社会課題と真剣に向き合う健全な怒り、そして正義を問う訴えが宿る。「柔らかいビロードの手袋に包まれた鉄の拳」という表現がある。グレタさんもオーストラリアの若者も、「外柔内剛」のパワーを示した。

 「大人は子どもに『散らかしたら片付けろ』というくせに、自分たちは地球を汚してその後始末を子どもの世代に押しつけている」「目先の経済成長を優先して子どもたちの未来を奪っている」-。世界や国レベルでの気候変動対策の正義を問う怒りに、大人はどう向き合うのか。

 持続可能なまちづくりをめざし、環境保全と経済成長の共存を唱えていれば責任を果たしたかのような気になっていないか。時として必要な「怒る」という感受性さえ鈍くなっていないか。そう自問する日々だ。

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 地元にも、長期的な環境の回復や保全活動に取り組む若い世代がいる。福岡県福津市にある県立水産高校の生徒たちが、学校近くの大峰山の竹林と原生林を整備する活動を始めて9年がたつ。沿岸の藻場が減って、漁場環境は悪化し、地元の漁港に水揚げされる魚が年々減少する中、プロジェクトが始まった。

 原生林の広葉樹を荒らしていた竹を伐採すれば、広葉樹が林に戻り、落ち葉が栄養分となって海へ流れ出し、海が豊かになる。生態系全体の環境改善をめざす長期的な計画を、竹の膨大な量と驚異的な繁殖力にひるむことなく、後輩へと引き継いできた。伐採竹を使って漁礁をつくり、漁獲量を改善するなど、竹の活用方法開発にも挑戦している。これまでの取り組みが評価され、生物多様性アクション大賞2018の特別賞を受賞した。九州工業大学の学生グループや地元の子育て世代など、大峰山に入って活動する人たちも増えている。

 今年は統一地方選挙の年であり、参議院選挙もある。大人は、自分たちの投票が地域の未来や地球の未来を決めることを自覚したい。子どもたちの声は、未来の声。真の力は人々のものであり、人々の行動にある。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

=2019/01/07付 西日本新聞朝刊=

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