【子育て支援と子育ち応援】 松田 美幸さん

松田 美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長
松田 美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長
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◆赤ちゃんの里親になる

 尊敬する友人が新生児の養育里親になった。大学生と高校生のお子さんがいて、まもなく子育ても卒業という彼女たち夫婦が、生まれたての赤ちゃんを家族に迎えたことで、周囲の私たちもたくさんのことを学んでいる。

 親がいない、親が育てることができない-さまざまな理由で、生みの親と一緒に暮らせない子どもを、公的責任で社会的に養育すること。これを社会的養護と言う。「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」という社会的養護の基本理念の浸透や制度の周知が課題だ。

 里親になった彼女は、一年前に自身の娘の高校卒業のときの気持ちをこう表現していた。「天から授かった娘を、社会にお返しするような気持ちでいます」。その言葉には、子どもは社会の中で育つことへの感謝があふれていた。娘さんにはこう伝えたという。「生まれてきたあなたをこの手に抱いたとき、大切に守っていかなくてはという責任感で胸がいっぱいになりました」。子育ての真っ最中には、そうした責任感や孤立感に押しつぶされそうになることがあるかもしれない。悲惨な児童虐待の話を聞くにつけ、子どもを育てることが困難な親を支える社会づくりが緊急課題であることを痛感する。

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 政府資料によると、平成29年度で保護対象の児童数は約4・5万人。この30年間はほぼ横ばいだが、年少人口の減少を考慮すれば、割合は増えていることになる。また、児童虐待に関する相談件数は児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ、平成29年度には約11・5倍に増加している。里親と暮らす子どものうち約3割、乳児院入所の子どものうち約4割、児童養護施設入所の子どものうち約6割は虐待を受けた体験があるという統計もある。今ほど、社会的養護の量・質ともに拡充が求められているときはない。

 里親やファミリーホームという家庭養育で暮らす割合を示す里親等委託率は増加傾向にはあるが、まだ2割にとどまり、国際的にみると圧倒的に低い。平成28年の児童福祉法の改正を受けて、社会的養護は「家庭養育」が原則であるとされ、政府はその後、里親等委託率を乳幼児は75%以上、学童期以降を50%以上という目標を掲げた。

 里親等委託率は、自治体間の格差が大きい。九州では大分県、福岡県、佐賀県が全国平均をやや上まわっている。福岡市は43・8%と群を抜き、市民参加型の取り組みは高く評価されている。

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 子育て世代の転入が多い福岡県福津市では、市民による子育て支援活動は以前から活発だが、新しい取り組みも生まれつつある。

 乳幼児を連れて外出もできず孤立しやすいママたちが、心もお腹(なか)も満たされるようにと始まったのが「ちいさなおうちカフェ」事業。日本の母子保健の水準は評価されているが、母親よりも新生児や乳幼児に対するケアに重きが置かれているため、産後の母親に対するケアが見過ごされてきた。妊産婦の死亡原因のうち「自殺」が一位であることが、厚生労働省研究班の調査結果として昨年発表された。誰かの家をカフェにして、地域の先輩ママたちに支えられ、ゆっくりと過ごす時間は行政にはできないサービスだ。

 また、地元で育った高校生・大学生たちが、次代のリーダー育成に取り組み始めている。この活動には、大人たちも巻き込んで、「子育ち応援隊」と名づけられた。子どもたちが主体的に関わり、自律的に育っていくことにこだわったネーミングである。こうした小さな積み重ねが、子どもを権利の主体と位置づけ、社会的養護の社会化につながっていくと期待している。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

=2019/02/25付 西日本新聞朝刊=

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