【地域の針路】公務員「副業」人手補う 農家手伝い、神楽舞い手、部活コーチ

神楽の衣装を広げる佐山さん。地域での活躍の場が広がれば本業の励みにもなると感じている=宮崎県新富町
神楽の衣装を広げる佐山さん。地域での活躍の場が広がれば本業の励みにもなると感じている=宮崎県新富町
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 地域の人手不足を補おうと職員の副業を“解禁”する自治体がじわりと広がっている。サイドビジネスとは異なるその試みとは-。

 その日も宮崎県新富町長の小嶋崇嗣(47)は役場を歩き回り職員に声を掛けていた。

 「副業、しない?」

 町が職員の就業内規で「副業」を認めるように見直したのは4カ月前。人口減、少子高齢化で地域活動が細る中、職員自ら地域に飛び出し、住民と協働で課題解決に取り組もうという全国でも珍しい取り組みだ。

 (1)勤務時間外(2)地域に貢献する活動-を条件に副収入を認める。想定しているのは農家の手伝い、高齢者の買い物や地域行事の支援などだが、コンビニのアルバイトもありだ。「今や地域になくては困る存在だから」と小嶋は言う。

 3人の職員が「神楽の舞い手」を届け出た。7年前から続けており、季節の祭りや年末年始など奉納は年25日間あり、一定の報酬もある。その一人、佐山雄樹(31)は「やってみて、地域に向ける目線が変わった」という。

 2002年の1万9千人余りから緩やかに人口が減り、現在は1万7千人を下回る新富町。昭和の頃、一帯の農家は冬に農作業を休み、寄り合いで酒を酌み交わしては神楽のけいこも重ねた。農家だけで舞い手が足りていたが、少子高齢化で存続が危ぶまれている。

 「参拝者の前で舞台に立ち地域に役立っている実感がある」と佐山。役所が忙しい時期は休む。佐山たちのほかにも、少年スポーツや中学校の部活コーチを届け出た職員もいる。

     ■

 「本業の枠を超えて地域を支える」。小嶋がそう考えたきっかけは、新富町議に初当選して間もない15年前。障害児の母親から放課後預かってもらえる場所がほしいと求められた。小嶋は「町を動かすには2、3年かかる。私たちでできることをやりましょう」と保護者とNPO法人を立ち上げ、そこで預かりを始めるなど課題解決に動いた。

 議員時代から、さまざまな部署を経験し専門知識や問題解決のノウハウを持つ職員の力をもっと生かせないかと考えていた。「もったいない。活躍の場は職務外にもあるのに」

 副業の本格解禁は2年前、神戸市や奈良県生駒市が導入し全国に広がりつつある。「地域貢献と職務外の経験による人材育成。報酬を認めることで活動も続けられる」。生駒市の職員の言葉は新富町の理念と重なる。とはいえ、本業がおろそかになるとの懸念から副業解禁に二の足を踏む自治体はまだ多い。

 そんな中、「地域に飛び出す公務員」を応援する首長有志で構成する「首長連合」が昨年11月、副業のガイドラインを発表した。「地域の一員として活動に励む」「副収入狙いではない」ことを定め、副業は地域を支える新しい考え方であることを強調している。草案を書いた福岡県庁の今村陽子(44)は「副業は個人や地域を幸せにする“福業”にもなる。職務の枠に縛られず、多様な支援の輪が広がれば」と期待を抱く。新たな時代の公務員像となるだろうか。 =敬称略

=2019/02/19付 西日本新聞朝刊=

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