市議会、問われる存在意義 九州4市で無投票

14人が無投票当選した枕崎市議選の候補者ポスターの掲示板。最後に届け出た沖園氏がポスターを準備しなかったため、14番目の枠は空白のまま締め切りを迎えた=14日午後8時ごろ、鹿児島県枕崎市
14人が無投票当選した枕崎市議選の候補者ポスターの掲示板。最後に届け出た沖園氏がポスターを準備しなかったため、14番目の枠は空白のまま締め切りを迎えた=14日午後8時ごろ、鹿児島県枕崎市
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 14日告示された九州7県の39市議選には総定数826に対し、計996人が立候補を届け出た。うち4市では立候補が定数と同数となり、無投票で計62人の新議員が決まった。全国では11市で計182人が無投票当選しており、約3分の1を九州が占めた。無投票の4市議選を除く35市議選(総定数764)で計934人が議席を争う。

 市別で競争率が最も高いのは、定数27に対し38人が出馬した宮崎県延岡市の1・41倍。次いで定数40に56人が名乗りを上げた宮崎市の1・40倍、定数25に34人が挑む大分県別府市の1・36倍と続いた。最も低いのは、定数23に24人が立候補した同県宇佐市の1・04倍だった。

 九州の女性候補は計122人で、全候補に占める割合は12・2%(全国は17・3%)。計115人が立候補した前回の10・7%を上回った。女性候補者の割合が最も高かったのは、19人中5人を占めた熊本県水俣市の26・3%で、福岡県大牟田市の22・6%が続いた。大分県杵築市と無投票の大分県津久見市では女性の立候補がなかった。

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「定数割れ」引退撤回で回避 枕崎、締め切り2時間前決断

 無風は市民に最も身近な市議選にも及んだ-。14日告示された市議選のうち、九州では鹿児島県枕崎市(定数14)や宮崎県小林市(同19)など4市が無投票に終わった。過疎高齢による人材不足や「生活給」が保障されにくい低報酬、議会への関心の低さが、深刻ななり手不足につながっている。地方議会の存在意義が問われている。

 1949年の市制施行以来、初めて無投票になった枕崎市議選は直前まで、市議選では全国異例の「定数割れ」の懸念があった。

 「皆さまにお伝えしなくてはいけない。ずっと伏せておいて申し訳なかったが、私も当選者の一人です」

 無投票が確定した14日夕、市内であった新人の上迫正幸氏(56)の当選祝賀会。鏡開きも済んだ終盤、陣営の選対責任者で現職市議の沖園強氏(68)が切り出した。7期を最後に引退を公言していた沖園氏。同じ集落の上迫氏を自らの後継に擁立していたが、定数割れの観測が浮上。「定数も満たせない議会は恥ずかしい」と告示当日、届け出締め切りの2時間前に引退を撤回。14人目で出馬し、8選が決まった。上迫氏のポスターを背に異例の当選報告となった。

 早朝から上迫氏陣営の青いジャンパーを着て出陣式を取り仕切った沖園氏。届け出に必要な書類はそろえたが自らのポスターや選挙ビラは用意しなかった。もし新たな候補が現れれば届け出はしないつもりだった。沖園氏は「なり手不足は、地域の期待感を背負ってまで議員をやる人が少ないからではないか。市民の議会への関心も低い。定数削減の議論をしていかざるを得ない」と語った。

 担い手不足には報酬も絡む。全国市議会議長会によると、今回無投票の九州4市が該当する人口5万人未満の全国の平均月額報酬は33万1千円(2017年末現在)。枕崎市は27万5千円と低さが際立ち、九州108市でも6番目に低い。

 引退する枕崎市議の俵積田(たわらつみだ)義信氏(83)は、元公民館長(68)と後継探しに奔走。特定郵便局長や自営業者、市役所OBの計4人に打診したが「仕事と議会を両立できない」などの理由で断られた。元館長は「市議の報酬だけでは食べていけない。定数を減らし待遇を上げれば意欲がある人が来る」とみる。俵積田氏は「市議が『集落の代表』という住民意識が薄れたことが市議選が盛り上がらない要因の一つではないか」と指摘する。

 総務省統計データで確認できる93年以降、九州の市議選の無投票は今回の4市を含め計39。定数割れはないが無投票は増加傾向だ。

 大分県津久見市議選(定数14)は2回連続無投票となった。市内の水産会社勤務の男性(38)は「一番身近なはずの選挙が最も遠くに感じる。市当局の漁業振興への動きが鈍いのは、市議会の批判が少ないからではないか」と強調した。

 5選を決めた現職の知念豊秀氏(65)は「『誰がなっても一緒』という空気が強まっている」と表情を曇らせる。「無投票だと議員と有権者の間に溝が生じる。2回連続なら市民の関心が下がり議員のなり手不足の悪循環になる。定数割れすると、もう地方自治は成り立たないのではないか」

 定数を1減した佐賀県多久市議選(定数15)も同じく2期連続無投票。流れを変えようと出馬した新人の鷲崎義彦氏(63)は「政策の訴えを聞いてほしかった。関心を持ってもらえず残念」と困惑気味。同市の男性(65)は「無投票は緊張感がなくなる。『市民の負託に応える』という初心も薄れかねない」と懸念した。

=2019/04/16付 西日本新聞朝刊=

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