離島の医療態勢 大丈夫なの? 「本土と同じ安心」遠く

9日に増床される長崎大病院のNICU。本土側の医療態勢は充実が進むが…
9日に増床される長崎大病院のNICU。本土側の医療態勢は充実が進むが…
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 5年ほど前、五島市内の公立病院で男児を産んだ30代女性は「本当は心配だった」と打ち明ける。出産を経験した友人から「早産で赤ちゃんが小さかったら、大村までヘリコプターで運ぶんだよ」と聞かされていたからだ。

 本土には大村市の国立病院機構長崎医療センターなど最先端の設備を整えた医療機関があるが、離島では望めない。そもそもリスクを伴う出産という人生初の体験に加え、環境が不安を増幅させる。無事に生まれてくれた時、ほっとした。「本土と同じように安心できる環境がほしい」が本音だ。

 今月9日、その本土側の出産前後の医療態勢がさらにアップする。胎児や新生児、母体に大きな負担がかかる周産期(妊娠約5カ月~出産後7日未満)を中心にケアに当たる県内4カ所の「周産期母子医療センター」の一つ、長崎大病院が新生児集中治療室(NICU)を6床から12床に倍増する。

 国の基準では、1年間の出生1万人に対して県全体で25~30床が必要。2016年度は24・8床だったため、今回の増床で目標に達する見込み。増崎英明病院長は「長崎が安心してお産ができる場所になる」と言う。

 ただ、それは本土に限った話。人口が少ない離島で本土並みの医療設備や人員を整えるのは「非現実的」(増崎氏)。離島の妊婦や患者に一刻を争う事態が起きた場合は、ドクターヘリで本土の病院まで運ぶというのが県医療政策課の基本的な考えだ。

 県によると、五島列島、壱岐、対馬からの搬送件数は年間200~250件。県防災ヘリも出動するほか、佐賀県のドクターヘリとも相互応援協定を結ぶ。一見、万全に映るが、ドクターヘリの運航は昼間、視界がある場合に限られる。夜間は海上自衛隊のヘリが対応するケースもあるが、そのヘリに医療設備は整っていない。悪天候だと飛べないのは、言うまでもない。

 16年12月現在、県内の人口10万人当たりの医師数は308・6人。全国平均の251・7人を上回り、47都道府県では8位。ところが離島に限ると170・9人で、最下位の埼玉県(167・0人)とほぼ同じ。こうした状況に対処するため、地域医療の拠点である長崎大病院が、離島や半島などへき地の病院からの依頼で医師を派遣し、かろうじて命をつないでいるのが実情だ。

 長崎市の離島、炭鉱があった高島もその一つ。常駐していた70代の男性医師が昨年12月から体調を崩して不在になり、長崎大病院の医師が平日の昼間と、週末は泊まり掛けで診療に当たっているが、常駐再開のめどは立っていない。

=2019/03/06付 西日本新聞朝刊=

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