【おおいた再考】(1)農業 「一村一品」から転換

ベビーリーフの状態をチェックする安心院オーガニックファームの従業員たち
ベビーリーフの状態をチェックする安心院オーガニックファームの従業員たち
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 宇佐市安心院町の東九州道・安心院インターチェンジ近くの平地に、何棟ものビニールハウスが連なる。「安心院オーガニックファーム」は、福岡市の農産物卸売業「むらおか」など2社が共同出資し、2013年に設立した農園だ。

 主力の生産品はサラダなどに使うベビーリーフ。軽く、航空機で大量搬送できる利点を生かし、関東への出荷が多い。肥料には地元焼酎メーカーの焼酎かすなどを使い、全て手摘み。品質の良さが好評で、売り上げは初年度の約2千万円から18年度は7倍の1億4千万円に達する勢いだ。

 縁のない大分になぜ進出したのか。東日本大震災後の風評被害で関東産の農産物が落ち込んだ際、九州での農業参入を目指す2社を最も積極的に誘致したのが大分だったという。「金銭面の補助だけでなく、将来の拡大を見据えたプランを提示してくれるなど、他よりも対応がきめ細やかだった」とファームの村岡賢一郎社長(43)は語る。

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 企業参入は、4期16年務める広瀬勝貞知事が03年の就任後に掲げた農業施策の柱だ。背景には「一村一品」からの脱却がある。

 「ウメ、クリ植えてハワイに行こう」を合言葉に農家収入増を目指した大山町農協(現日田市)の「NPC運動」をモデルとし、平松守彦前知事(故人)が主導した一村一品運動。「関あじ関さば」などのブランド産品を世に送り出し、昭和後期以降の地域振興の起爆剤となった。ただ、多品種少量生産に偏り市場の需要に応えられなかったり、同じ品目を複数自治体が掲げたりしてブランドが乱立。「農業全体としては競争力低下を招いた」(県幹部)との反省があった。

 県は「足腰の強い稼げる農業」を目指し、生産態勢の再編に着手。企業参入と、集落単位で農作業にあたる「集落営農組織」の設立を進めてきた。参入企業数は07~17年度の11年間で計255社。参入企業による16年度の産出額は128億円で、県全体の1割に達した。07年から本格化した集落営農組織の設立は、14年に目標の600組織に到達。今では県内約6500ヘクタールの農地を同組織が管理する。県農林水産企画課の石井聖治・構造改革企画監は「この10年で農業全体の底上げは進んだ」と強調する。

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 ただ肝心の農業産出額は担い手減、高齢化により1994年の1850億円をピークに減少が続き、14年には1268億円まで下落した。その後、持ち直して16年は08年と同レベルの1339億円。ようやく上向き始めたばかりだ。「昔は各地域がこぞってブランド産品を作り、県も頑張りに応えて売り出して活気があった。今は生産現場に勢いがない」(県内の農協幹部)など厳しい声も根強い。

 県はさらに、山間部などの稲作に不向きな土地を畑地化し、果物や野菜など園芸品目の生産へ切り替えを進める。22年までに水田約2万ヘクタールのうち500ヘクタールを畑にする方針で、「マーケットを最優先に考え、需要が高い産品を一定量そろえ、売り出していく」と石井・構造改革企画監は意気込む。安心院オーガニックファームの参入に携わったコンサルタントの山下弘幸さんは「今の県の取り組みは派手さはないが堅実だ。『稼ぐ農業』を広げるため、マーケット最優先の姿勢を貫いてほしい」と話す。

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 21日告示の知事選を皮切りに、平成最後の統一地方選挙が始まる。新時代へ大分の未来をどう描くか。県内課題を再考する。

=2019/03/14付 西日本新聞朝刊=

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