【おおいた再考】(2)スポーツ観光 豪華ドーム「明と暗」

開閉式の昭和電工ドーム大分。奥は建設中の県立武道スポーツセンター。大分市中心部からのアクセスは悪い(本社ヘリから)
開閉式の昭和電工ドーム大分。奥は建設中の県立武道スポーツセンター。大分市中心部からのアクセスは悪い(本社ヘリから)
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 9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会では、大分市の昭和電工ドーム大分で5試合が行われる。準々決勝以上の試合があるのは首都圏以外では大分だけ。好カード誘致に成功した要因について、多くのラグビー関係者は、4万人収容というドームの規模に加え、ガラス張りのVIP席を挙げる。

 大分市出身で海外でもプレー経験のある元日本代表の今泉清さん(51)は言う。「英国のチームが上位進出すればロイヤルファミリーが来る。立派なVIP席があったのは大きい」

 大会には英国から4チームが出場する。イングランドはヘンリー王子、ウェールズはウィリアム王子、スコットランドはアン王女が各ラグビー協会のパトロンを務め、観戦を計画しているとされる。大分ではウェールズの予選試合があり、準々決勝にイングランドが登場する可能性もある。

 日韓共催の2002年サッカーW杯に向け、250億円をかけて造られたドーム。世界基準のVIP席を備える堂々たる施設ゆえの誘致成功だった。

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 開閉式のドームが完工したのは01年。その立派さゆえ、維持費はかさんできた。管理運営費は年3億8千万円。収入は使用料や大分市の負担金などで、県は不足する約1億円を毎年支出してきた。サッカーJ1、大分トリニータのドーム使用料も免除しており、この「隠れ負担」も影響している。「利用者は多く、費用対効果は十分にある」。担当の県公園・生活排水課は強調する。

 だが、J1の試合で全国を回ったある会社員男性は言う。「多くの競技場は最寄り駅から歩いて30分程度。大分は明らかに遠くて行きづらい」。大分駅からタクシーで約30分。マイカーがなければ観戦はためらわれ若年、高齢層には負担感がある。

 多くの観客を呼び込むとともに、ファンに近くの飲食店を利用してもらうため球技場は中心地に造るのがトレンドだ。北九州市のミクニワールドスタジアムは小倉駅から徒歩10分圏内。長崎市のスタジアムも長崎駅から約500メートルの場所に検討されている。

 ドームの豪華さの裏にある大きな維持費と不便さ。あるラグビー関係者は「前の平松守彦県政の明と暗が、ドームには象徴的に表れている」と漏らす。

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 昭和電工ドーム大分の横に今年5月、県立武道スポーツセンターが完成する。総工費80億円。バスケットボールなどの試合ができる多目的競技場を備え、広い武道場もある。センターの完成やW杯を機に、県には全国大会や合宿などを誘致するスポーツツーリズムを加速させたい意向がある。

 「温泉」の優位性もあり、県内で行われる合宿は14年度の1146件が17年度には1553件まで増加。駅伝の強豪、青山学院大陸上競技部も3年前から春季キャンプを張っている。

 ただ、アクセスの悪さがつきまとう。県教委はドームを含めたスポーツ公園に関し「県内の高校はだいたい自前のバスを持っている」として、アクセスが悪いとは言わない。ただ、全国大会や合宿で遠方からチームが来る場合、大分でのバスのチャーターなど課題があるのは事実。他の自治体もスポーツツーリズムには積極的で、誘致合戦は容易には勝ち抜けない。

 「不便な施設をどう生かすか。活用策を考えるしかない」と県幹部。“宝の持ち腐れ”とならないよう、知恵の出しどころである。

=2019/03/15付 西日本新聞朝刊=

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