ピクチャレスクと4K 編集委員 塩田 芳久

 九州国立博物館(福岡県太宰府市)の文化交流展示室に、スーパーハイビジョンシアターがある。320インチ(幅約7メートル、高さ約4メートル)の大画面の解像度は、現在のテレビで受信できるフルハイビジョン放送用の16倍もあり、8Kと呼ばれる次世代画質だ。

 現在の上映作品は「神やどる島 宗像沖ノ島」。世界文化遺産に選ばれた玄界灘の孤島・沖ノ島が映像で紹介される。描写は細密で、露出した岩肌のざらつきや木漏れ日を透かす森の木々の葉脈まで見えたような気がした。

 そんな8Kや、4K(フルハイビジョンの4倍の解像度)画質を家庭で楽しめる衛星放送が、12月1日に始まる。

 東京五輪を視野に4K・8K放送推進をうたう総務省は、精細さ、多彩な色表現、滑らかな動きの描画など特長をアピールしている。スポーツ中継にそこまで高画質が必要かはさておき、四角に切り取られた画像の美しさは、感動を呼び起こすのだという。

 18世紀、英国でピクチャレスクという美的考え方が流行した。「絵画のように美しい」という意味だが、大きな世界を長方形に切り取って1枚の絵のように構成する「長方形の世界観」が基になっている。芸術家が長方形に切り取って描いた作品で何が美しいのかを示すことで、その作品を通して、そこに表現された対象の美しさにも気付く-。

 当時の英国人は、このピクチャレスクという新しいモノの見方で、自然や庭園、建築にも新しい価値を見いだしたとされる。

 テレビ画面もピクチャレスクの延長線上にある。長方形の世界観はそのままだが、4K画質に進化することで、さらに新しい価値を見いださせてくれるだろうか。そんな期待を胸に、4K放送視聴には何が必要か、調べた。

 まず4K「対応テレビ」は必須。4K放送用のチューナー(受信機)も購入リストに入る。実は、対応テレビにはチューナーは内蔵されておらず、テレビ単体では受信できない。チューナー内蔵4Kテレビも発売されたが、個人的には高根の花に思える。

 アンテナも、放送衛星から新しい方法で電波が送信されるので、交換が必要か。今のアンテナで視聴できる放送もあるが、全部のチャンネルが見たいなら出費は覚悟だ。

 現在のハイビジョン放送がなくなるわけではないし、今なお十分に感動は味わえる。ここは、われわれが立ち入れない沖ノ島のさらなる臨場感に満ちた映像体験のような、ピクチャレスクによる新たな価値を際立たせる4K番組の登場待ち、か。

=2018/08/25付 西日本新聞朝刊=

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