今天中国~中国のいま(23) 民主と専制のはざま

「1人1票」の選挙を求めた民主派主催のデモ。北京では見られない光景だ=25日夕、香港の繁華街
「1人1票」の選挙を求めた民主派主催のデモ。北京では見られない光景だ=25日夕、香港の繁華街
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 香港の繁華街の食堂で麺を頼んだら、セットメニューとしてトーストとオムレツ風の料理が出てきた。中華と西洋が混ざり合った独特の文化。香港社会は自由な雰囲気にあふれている。

 26日に投開票された香港行政長官選挙も一見、自由な雰囲気だった。候補者3人は討論会に出席したり、遊説したり。メディアは連日、世論調査の結果を報じた。支持率トップの候補者の演説を聞こうと、街角に数千人が集まった。

 けれど、投票権を持つのは1200人の選挙委員だけ。大半は2千キロほど離れた北京の意向に従って投票し、「民意」とは異なるリーダーが誕生した。

 「ギャグ映画みたい」。出会った地元大学の研究者は苦笑いした。彼いわく、民主主義なら民意を多く得た者が勝つ。一方、専制主義では選挙も、民意を探る世論調査もない。かつては香港の民意と北京の意向にさほど違いがなく問題にならなかったが、今回、二つの異なる原理を使う矛盾が表面化してしまった。「世界史史上、珍しいのでは」

 「一国二制度」で高度な自治を認められつつ、中国の一部でもある香港の複雑な立ち位置が浮かぶ。言論の自由、多様な価値観を認める香港式と、政治的には「単色」しかあり得ない中国式。ギャップは大きい。

 開票後の記者会見で、候補者たちは感極まったり、涙ぐんだりした。安堵(あんど)感、悔しさ、内心さまざまだろうが、選挙戦を通じて触れ合った支持者の顔も胸を去来したのではないか。

 百戦錬磨、水面下の権力闘争にたけた北京の指導者たちも、味わったことのない気持ちだろう。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2017/03/31付 西日本新聞朝刊=

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