「開城」再開めど立たず 文氏も慎重姿勢に転換 韓国大統領選

 【ソウル曽山茂志】韓国と北朝鮮による経済協力事業「開城(ケソン)工業団地」の操業再開のめどが立たない。5月9日投開票の韓国大統領選の主要候補はいずれも、北朝鮮の軍事挑発が収まらない中では早期再開が困難との姿勢だ。昨年2月、朴槿恵(パククネ)前政権が北朝鮮への独自制裁として閉鎖を決めて1年余り。団地に進出した韓国の企業経営者は諦めきれない思いで、選挙戦の行方を見守っている。

 「進出企業の3割は既に事業を停止している。早く再開しなければ、経営が行き詰まる企業がさらに増える」。工業団地企業協会の柳昌根(ユチャングン)副会長は怒りが収まらない。団地には韓国の衣料品、自動車部品メーカー、情報技術(IT)関連など120社余りが進出し、北朝鮮の労働者約5万5千人が働いていた。柳氏によると、稼働中止に伴う設備や在庫の損失額は全体で約1兆5千億ウォン(約1500億円)に達するという。

 工業団地の再開については、北朝鮮との融和を掲げる革新系最大野党「共に民主党」候補の文在寅(ムンジェイン)氏は従来、早期再開を主張していた。しかし、6回目の核実験の兆候をみせる北朝鮮に対し、トランプ米政権が4月、軍事行動も辞さない強硬姿勢を示すと慎重姿勢に転じた。中道の第2野党「国民の党」候補の安哲秀(アンチョルス)氏や保守系の「自由韓国党(旧セヌリ党)」候補の洪準杓(ホンジュンピョ)氏は、一貫して早期再開に否定的な姿勢だ。

 進出企業は現在、韓国や東南アジアの工場に生産を振り分けるなどして事業を継続。企業協会のアンケートによると、進出企業の9割超は、人件費や物流コストが抑えられる開城工業団地での操業再開を希望しているという。

 自らも中国向けの自動車部品の生産などで約460人の北朝鮮労働者を雇っていた柳副会長は「工業団地は、北朝鮮の国民が資本主義を学ぶ場所でもあった」と強調。「南北で協力してモノ作りに取り組んで信頼関係を築くことが、将来の統一につながる」との信念で、次期政権に早期再開を粘り強く働き掛けていくつもりだという。

【ワードBOX】開城工業団地

 北朝鮮南西部の開城(ケソン)で韓国企業が北朝鮮労働者を雇用して運営する工業団地。2000年に韓国の現代グループが経済交流事業として提唱し、故金大中(キム・デジュン)大統領と北朝鮮の故金正日(キム・ジョンイル)総書記との南北首脳会談で合意。04年末に操業を開始した。韓国統一省によると、当初進出企業は18社だったが、10年には120社を超えた。15年の生産額は約5億1500万ドル(約560億円)。韓国政府は、昨年1月の北朝鮮による4回目の核実験と、同2月の事実上の長距離弾道ミサイル発射への制裁として、操業停止を決定。北朝鮮は反発し、一帯を軍事統制区域に指定した上で、工業団地のすべての資産を凍結すると通告した。

=2017/04/19付 西日本新聞朝刊=

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