民主国家と連携必要 試練の台湾~蔡英文政権1年(中)

羅福全氏
羅福全氏
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 台湾安保協会名誉理事長・羅福全氏に聞く

 【台北・中川博之】中国との統一を拒否する民意を受けて誕生した民主進歩党(民進党)の蔡英文総統は「一つの中国」原則を認めていない。中国からの圧力が厳しさを増し、難しい外交のかじ取りを迫られる中、蔡政権は対日交流窓口機関の名称を「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に変更するなど、日本との関係強化を明確に打ち出している。

 「誰も予測できない北朝鮮の核・ミサイル開発問題によって、東アジアはこれまでにない不安定な地域になっている。その中で最も安定している国は日本。米国のトランプ大統領も日本をアジアで一番信頼しており、日米同盟がアジアの平和の基軸となっている。台湾が日本との関係を深める意味は大きい」

 蔡政権に対する中国の圧力は国際機関にも及び、前回までオブザーバー参加が認められていた国際民間航空機関(ICAO)や世界保健機関(WHO)の総会から締め出された。

 「2300万人の台湾人が国際的な安全、衛生、福祉のネットワークから排除されるのは重大な問題だ。政治的信念によって差別されないとするWHO憲章にも反している。蔡氏が昨年の総統就任演説で『一つの中国』に触れなかったことや、大統領就任前のトランプ氏と電話会談したことは、台湾の存在を世界に示した。しかし、台湾の主権を主張し、中国による主権侵害を訴えるにはまだ不十分。蔡氏が『台湾は中国に属していない』と国際社会に向かって宣言することが必要だ」

 蔡氏は昨年10月、辛亥革命記念日に当たる「双十節」の式典で中国に対し「われわれは圧力に屈することはない」と訴えた。対する中国の習近平国家主席は同11月、「中国の領土を分裂させることを絶対に許さない」と演説。12月には中国海軍の空母が初めて台湾周辺海域を一周した。

 「中国による武力統一を心配する声はあるが、世界中が見ている中で無理やり台湾を攻めることはできない。脅しに屈しないためには、中国による主権侵害に世界の関心が集まるようにするしかない。中国が今後も経済発展を続けて先進国の仲間入りを果たすには、一党独裁体制の転換が迫られるだろう」

 今月初旬、中国指導部は北朝鮮に圧力をかける見返りに、ハリス米太平洋軍司令官の更迭をトランプ政権に求めたと報じられた。ハリス氏は「台湾の自主防衛力強化に協力し、中国のいかなる武力統一も受け入れない決心を示さなければならない」と発言している。

 「北朝鮮問題で中国の協力を得るために通商交渉で譲歩するなどトランプ政権の方針は不安定で、必ず台湾を支援してくれるとは考えない方がいい。中国の台頭により、今後の世界は民主主義と専制主義の対立に向かう可能性がある。台湾が米国の支持を保つためにも、自由と民主主義を重視する同じ価値観を持つ日本や欧州、東南アジアの国々との関係強化が欠かせない」

 羅 福全氏(ら・ふくぜん) 国連大学などに勤務後、台北駐日経済文化代表処代表、亜東関係協会(現台湾日本関係協会)会長、台湾安保協会理事長などを歴任。82歳。

=2017/05/19付 西日本新聞朝刊=

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