内憂外患 しぼむ期待 試練の台湾~蔡英文政権1年(上)

游盈隆氏
游盈隆氏
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 台湾民意基金会会長・游盈隆氏に聞く

 【台北・中川博之】台湾の蔡英文政権発足から20日で1年を迎える。「自分は中国人ではなく台湾人」と考える台湾人意識の高まりとともに圧倒的な支持を受けて誕生したが、台湾統一を目指す中国の圧力や重要政策の難航に苦慮し支持率は低迷している。蔡政権の1年を振り返り、その評価と課題、今後の展望を識者に聞いた。

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 昨年5月、8年ぶりに政権を取り戻した民主進歩党(民進党)。立法院(国会)でも定数113のうち68議席を占め、初めて単独過半数を獲得した。しかし、財団法人台湾民意基金会の世論調査によると、蔡総統の支持率は政権発足時の69・9%(不支持8・8%)から、今年1月には33・8%(同54・4%)に半減。その後も支持は40%前後と伸び悩んでいる。

 「非常に高い期待を受けて始動したが、積極的に取り組んだ年金改革や週休2日制の導入、同性婚の合法化はいずれも強い反発に遭っている。経済政策も6割の人が不満に感じている」

 昨年12月、蔡氏は自身のフェイスブックに「改革はマラソンだ」と書き込み、制度改革に時間がかかることへの理解を求めた。

 「政策停滞の原因として、蔡氏自身の制度改革の難しさに対する認識不足が挙げられる。目標にする数字や実施時期を示さずに議論を進める手法は、リーダーシップが足りないと言われている。閣僚に民進党員をほとんど起用せず、自分が信用する親しい知人で固めたため、政府と与党の連携もうまくいっていないように見える。12人の主要閣僚のうち6人は知名度が2%以下という驚くべき結果も出た。支持率回復には全面的な内閣改造が必要だろう」

 中国との関係も難題だ。中国と台湾は不可分の領土とする「一つの中国」原則を認めなかったため、中国との交渉窓口が閉ざされ、さまざまな圧力を受けている。3月には民進党元職員で民主化運動に取り組む非政府組織(NGO)職員の李明哲氏が中国で拘束され、台湾政府に詳しい説明がないまま約2カ月が過ぎた。2009年以降オブザーバー参加してきた世界保健機関(WHO)の総会にも今年は招待されていない。

 「李氏の拘束問題では、世論の半分以上がもっと厳しく中国に抗議するよう求めている。国連加盟も85%が希望しているが、蔡氏は就任以来一度も加盟を訴えていない。中国に嫌われないよう、刺激しないようにしているのではないか。台湾の主権や地位についての主張の仕方に不満を持っている人は多い」

 8年ぶりに野党に転落した国民党は、年金改革や週休2日制導入を批判し、民進党政権への不満の受け皿を目指す。国民党系の8市県の首長らが中国を訪れたり、中国の訪問団を受け入れたりして中国とのパイプもアピール。昨年11月には洪秀柱党主席が中国の習近平国家主席と北京で会談し、蔡政権に揺さぶりをかけた。

 「民進党の支持率は落ちているが、国民党の支持率はさらに低く、上がる気配がない。世論調査では半分の人が国民党について『中国人の利益になる党』と思っており、今のままでは政権奪回は難しいだろう。ただ、支持政党が無い人が大幅に増えており、蔡英文政権は難しい局面を迎えている」

 游 盈隆氏(ゆう・えいりゅう) 台湾民意基金会会長で東呉大教授。台湾政治学会会長、大陸委員会特任副主任、海峡交流基金会副代表などを歴任。60歳。

=2017/05/18付 西日本新聞朝刊=

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