核保有国どう引き込む 「日本に調整役」期待も 核禁止条約採択

核兵器禁止条約の採択後、「世界を変えよう」と訴えるカナダ在住の被爆者サーロー節子さん(右)=7日、ニューヨークの国連本部
核兵器禁止条約の採択後、「世界を変えよう」と訴えるカナダ在住の被爆者サーロー節子さん(右)=7日、ニューヨークの国連本部
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 米ニューヨークの国連本部で7日採択された核兵器禁止条約は、核兵器を初めて非合法化した点で、将来の「核なき世界」実現のきっかけとなり得る歴史的ルールといえる。しかし、核兵器を持たない国々による条約制定交渉は短期間で、議論が十分に深まったとは言い難い。交渉をボイコットした核保有国は採択直後に署名拒否を表明。核廃絶がいわば国是で、条約の推進役を担ってもおかしくない日本も署名を見送る。条約が真価を発揮するには多くの壁が立ちはだかる。

 「採択された」とのアナウンスが流れた瞬間、国連内の議場は拍手と歓声の渦に包まれた。条約制定交渉会議の参加国代表団も、傍聴に駆け付けた被爆者も皆、立ち上がり「今日は歴史的な日だ」と喜び合った。

 そんな祝賀ムードとは裏腹に、採択後も続いた会議では、条約賛成国から「内容は完璧ではない」との指摘が相次いだ。3月に始まった計2回の交渉会議は3週間余り。核問題の専門家らも「核兵器に関する禁止行為の対象は幅広いが、規定が詳細ではない」などと議論の甘さを指摘する。

 議論をまとめたホワイト議長(コスタリカ)ですら「考えられる最善の内容だが、参加国に不満があるのも事実」と、改定の余地が少なくないことを認める。

 採択に拙速感が否めないとはいえ、核保有国が中心の核拡散防止条約(NPT)体制では核軍縮が進まない現状に業を煮やす非保有国が、史上初の核兵器禁止条約を勝ち取った意義は大きい。条約は、核保有国や同盟国に核抑止力依存からの脱却を迫り、核軍縮や核廃絶につなげていく法的な後ろ盾になる可能性を秘める。核廃絶を切望する被爆者や市民団体は、条約をてこに「世界を変えよう」と意気込む。

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 ただ、核保有国と非保有国が対立して、保有国が1カ国も加盟しない状況が続けば、条約は意味を成さない。実効性を高める鍵を握るのは「各国間の対話」(中満泉・国連軍縮担当上級代表)。その調整役として多方面から名前が挙がるのが、唯一の戦争被爆国として核兵器の怖さをどの国よりも知る日本だ。

 条約では核兵器の禁止行為に加え、平和、軍縮教育や被爆者への医療支援の必要性もうたわれており、広島や長崎で積み重ねられた知見の発揮が期待される。

 ところが、米国の「核の傘」の下にある日本は、核抑止力の必要性を訴える米国に同調して、条約に加盟しない方針を表明。非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲共同代表は「日本は核保有国を条約の議論の場に連れてきて、非保有国との協力を進めるような行動を取るべき立場なのに…」と対応を批判する。

 「条約採択は核廃絶達成への序の口にすぎない」と訴える、カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(85)はこう続けた。「まだ遅くはない。日本が近い将来、条約を推進する一員になってほしい」。条約の締約国会議は、非締約国にも門戸を開く。 (ニューヨーク田中伸幸、坂本信博)

=2017/07/09付 西日本新聞朝刊=

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