廃品アート 街彩る 韓国・光州市の「ペンギン村」←年間数十万人が観光に 再開発の波、存続なるか

建物の壁や通りには、さまざまな作品が並ぶ
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靴を並べた作品
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ペンギン村の名前の由来になった金鐘〓さんは「最近はにぎやかになった」とうれしそうだった
ペンギン村の名前の由来になった金鐘〓さんは「最近はにぎやかになった」とうれしそうだった
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消火器で作った「ペンギン」を手に「まだまだ通りをにぎやかにしたい」と意気込む金東均村長
消火器で作った「ペンギン」を手に「まだまだ通りをにぎやかにしたい」と意気込む金東均村長
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平日も観光客が絶えない
平日も観光客が絶えない
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 韓国南部の光州市に、不要になった時計などの日用品や使用済みのペットボトルなどを使った「リサイクルアート」を飾るユニークな住宅街がある。通称「ペンギン村」。小さな畑から始まった動きが周辺に広がり、会員制交流サイト(SNS)などで話題になり、年間数十万人が訪れる「観光地」となっている。
 (光州・曽山茂志)

 ソウルから高速鉄道KTXで南へ約2時間。光州松汀駅からタクシーでさらに20分ほど走ると、古い住宅街の一角に大きなペンギンの看板が立っていた。

 看板横の路地を入ると、不要品を使って魚などを表現したオブジェが壁に飾ってあったり、雑然とつぼやスキー板、オルガンなどが置かれていたり。斬新な現代アートに見えるものもあれば、がらくた市にしか見えないものも。戸惑っていると、「どうです。村全体が一つの作品のようでしょ」。案内してくれた自称「村長」で制作者、金東均(キムドンギュン)さん(63)が胸を張った。

 4年前、親戚から住宅地にある畑の管理を任されたのがきっかけだった。畑とは名ばかりで、そこはごみ置き場。トラック4台分のごみを片付けながら、使えそうなものを畑の周囲に置いたり、壁に飾ったりしてみた。元会社員で美術のプロではないが、自由な発想が「面白いじゃないか」と評判に。畑でとれた野菜を近所に配ると、お礼として骨董(こっとう)品や不要品が集まるようになり、“作品”が増えていったという。

    ◇   ◇

 「ペンギン村」という名前は、近くに住む金鐘〓(〓は「こざとへん」に「是」)(キムジョンジェ)さん(67)に由来する。約50年前の交通事故のせいで足に障害があり、そろそろと歩く様子から地元で「ペンギンさん」と呼ばれており、それが村の名前につながった。天気が良い日は村に来ているという金鐘〓(〓は「こざとへん」に「是」)さんは「親しみを込めた愛称で気に入ってる。若い人も来てくれて、毎日楽しいよ」と笑顔を見せた。

 韓国の伝統家屋「韓屋」が連なる一帯(約3千平方メートル)にはかつて50人以上が住んでいたが、高齢化が進み今は数人。しかし、閑散とした空間を逆手に取った金東均さんの街角アートが共感を呼び、最近ではプロの画家や近隣住民も制作に協力して「遊び心」満載のエリアに生まれ変わった。

 週末には一日700~800人の観光客が訪れるという。平日もにぎわっており、デートで訪れた光州市の20代女性は「近くにこんな面白いスポットがあるなんて知らなかった」と満足げだった。

    ◇   ◇

 金東均さんの「若い人たちに、古い物の良さを見直してほしい」との願いは結実しつつある。だが、規模をさらに拡大したいという夢とは裏腹に、先行きには暗雲が漂っている。

 「最近、村が有名になり過ぎてしまって…」。住宅街の一角に昨年完成した光州市南区観光庁のビルで、企画担当の蔡裕梨(チェユリ)さんが困ったような表情を見せた。同区は2015年に政府から「観光都市」に指定され、周辺の教会などと一体となった観光再開発計画を策定中。「ペンギン村」一帯は、区が韓屋を買収して画家などに貸し出し、「芸術エリア」とする計画だ。

 蔡さんは「(ペンギン村の)展示物を全て残すのは難しいだろう」と話す。区は年内に韓屋を買収し、来年から一帯の整備を進める予定。人気上昇中のペンギン村は再開発の波にのまれるのか-。金東均さんらは「行政はわれわれの取り組みを評価している」と存続に自信を見せている。


=2017/07/17付 西日本新聞朝刊=

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