中朝国境の街に影響じわり 北朝鮮への住民感情が悪化 観光客急減、レストラン閉店相次ぐ

中朝国境を隔てる鴨緑江に架かる中朝友誼橋(左)。経済制裁下でも物資を載せたトラックが行き来する
中朝国境を隔てる鴨緑江に架かる中朝友誼橋(左)。経済制裁下でも物資を載せたトラックが行き来する
写真を見る
経営が苦しいとされる朝鮮式レストラン。北朝鮮に対する住民感情が悪化し、客足が鈍っているという=6日、中国・丹東市
経営が苦しいとされる朝鮮式レストラン。北朝鮮に対する住民感情が悪化し、客足が鈍っているという=6日、中国・丹東市
写真を見る
写真を見る

 北朝鮮の核実験を巡る国連安全保障理事会の協議で石油禁輸が焦点となる中、北朝鮮への送油施設がある国境の街、中国遼寧省丹東市では、制裁強化が市民生活に影響しないか懸念が広がっていた。核・ミサイル開発をやめない北朝鮮に対し住民感情は悪化。朝鮮式レストランや北朝鮮への日帰りツアーの客が急減し、中朝関係の冷え込みをうかがわせた。

 中朝国境を流れる鴨緑江から約6キロ離れた山間部に大きなタンクが並ぶ。北朝鮮へ送る石油の備蓄施設だ。施設内の引き込み線には石油を運ぶ黒い貨車が見える。黒竜江省の油田から列車で運んだ石油は全長約30キロのパイプラインで鴨緑江対岸の北朝鮮新義州に送られるという。施設周辺は厳戒態勢が敷かれ、停車して取材することも難しい。

 北朝鮮への中古車輸出を手伝っているという男性は「石油が禁輸になったら、北朝鮮がガソリン不足になって車が売れなくなる」と表情を曇らせた。

 国連安保理の制裁決議に基づき、中国は8月、北朝鮮からの石炭や海産物の輸入を全面禁止したが、丹東市内の市場には北朝鮮産のナマコが並んでいた。店員によると、禁輸前に取り寄せたものだという。今後、北朝鮮から海産物が入らないと困るのでは。疑問を口にすると、中朝貿易に携わった経験のある男性が教えてくれた。「北朝鮮で取れた高級ナマコなどの海産物は中国産に偽装して日本や韓国に輸出する。市内の市場には影響ないよ」

   ◇    ◇

 北朝鮮北東部の豊渓里(プンゲリ)で核実験が実施された3日、約400キロ離れた丹東もマンション高層階では揺れが感じられたという。「放射能漏れで空気と水が汚染されないか心配。北朝鮮の実験場が密閉されているとは思えない」と旅行業を営む男性は不信感をにじませた。

 男性によると北朝鮮の名所や学校を巡る日帰りバスツアーはかつて市外からの中国人観光客に人気で、多い時は1日10台を超えたが、最近は4、5台にとどまる。北朝鮮に対する反発が広がり、この1年で大幅に参加者が減ったという。

 民族衣装姿の北朝鮮女性が歌や踊りを披露する朝鮮式レストランも客が減り、閉店が相次いでいる。北朝鮮を経済面で支える中国に対し国際社会の視線が厳しくなる中、中国当局が北朝鮮女性へのビザ発給を厳格化しているとの指摘もある。営業中のレストランで女性従業員に新しい同僚は入店しているか尋ねると、表情を硬くして黙り込んだ。

 丹東市と接する北朝鮮の黄金坪島(ファングムピョンド)は中朝が共同開発する予定だったが、橋渡し役だった北朝鮮の張成沢(チャンソンテク)元国防副委員長が処刑されて事業は中止となった。今は国境にフェンスが張り巡らされているものの、隔てる川は干上がり、数十メートル先は北朝鮮だ。

 「北朝鮮を締め付けすぎたらフェンスを越えて難民が押し寄せてくる。隣り合わせの中国は米国みたいに厳しい制裁はできない」。案内してくれた旅行業の男性はつぶやいた。 (丹東・川原田健雄)

=2017/09/08付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]