北朝鮮包囲、抜け穴なお 原油供給は維持、打撃弱く 安保理制裁決議採択

 国連安全保障理事会が11日夕(日本時間12日午前)、6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する新たな制裁決議を全会一致で採択。2006年以降、9度目の国連制裁にして初めて北朝鮮向けの原油・石油精製品の輸出制限が盛り込まれ、過激化する一方の軍事挑発行動を抑え込みたい国際社会の決意が示された。だが、追い詰められた北朝鮮の「暴発」を懸念する中国とロシアの抵抗で石油規制が部分的にとどまるなど「抜け穴」もあり、金正恩(キムジョンウン)体制に打撃を与えるにはなお時間を要しそうだ。

■輸出の9割失う

 「核兵器開発を支える燃料と資金を世界が断たなければならない」-。11日、米国のヘイリー国連大使は、全会一致で採択された北朝鮮への新たな制裁決議の意義を強調し、国際社会が団結して完全履行する必要性を訴えた。

 北朝鮮が「水爆」と称する6回目の核実験から1週間余り。ヘイリー氏が「強引に」(日米外交筋)まとめ上げた制裁決議は、どれだけの効果があるのか。

 関係者は、主に中国向けの繊維製品の輸出禁止は北朝鮮経済に打撃になるとみている。大韓貿易投資振興公社によると、2016年の北朝鮮の輸出総額約28億ドル(約3千億円)のうち、石炭・鉱物類が過半数の51・7%に達し、維製製品が26・7%と続く。

 7月の2度にわたる大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に伴う8月の安保理決議で石炭や鉄鉱石は既に輸出禁止になっており、繊維製品を含めると北朝鮮は一気に輸出の9割を失う。

 さらに、ロシアなど世界40カ国以上で働く出稼ぎ労働者への新規の就労許可付与も禁止され、外交筋は「新規で更新されなければ、2~3年先にはゼロになる」と予想する。

 繊維製品の輸出禁止と出稼ぎ労働規制に伴い、北朝鮮は10億ドル(約1095億円)の外貨収入が途絶えるとの計算もある。日韓が新制裁を「かなり厳しい内容」と評価しているのは、このためだ。

■軍需に影響なし

 ただ、米国や日本、韓国などが主張した北朝鮮への原油・石油精製品の全面禁輸は今回も盛り込まれなかった。

 北朝鮮情勢に詳しい韓国の世宗研究所の鄭成長(チョンソンジャン)・統一戦略研究室長は、輸出制限などで金正恩氏が掲げる軍事力強化と経済成長の両立を目指す「並進路線」には影響するものの、原油供給が現状維持になったことで「軍需工業部門にはあまり打撃にならない」と指摘する。

 そもそも、北朝鮮の経済が好調とのデータもある。韓国銀行(中央銀行)の7月の発表によると、安保理が制裁を2度強化した16年の北朝鮮の国内総生産(GDP)は前年比3・9%増。中国との交易がけん引し、17年ぶりの高成長を果たしたもようだ。鄭室長は金正恩氏が進める公設市場の拡大などが浸透し、「制裁に耐える力をつけつつある」と指摘する。

 北朝鮮の「生命線」とされる原油・石油精製品の供給制限については、「根拠となるデータが中国とロシアの申告頼り」(韓国・聯合ニュース)。実態は不透明との見方が強い。

 「制裁は(国際社会が)履行してはじめて効果が発揮される」。韓国の康京和(カンギョンファ)外相は12日の国会で改めてこう強調。中国、ロシアを念頭にした発言であるのは明らかだった。 (ソウル曽山茂志、ワシントン田中伸幸、豊福幸子)

=2017/09/13付 西日本新聞朝刊=

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