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拷問、監視で狭まる中国の自由 弁護士、後ろ手に手錠18時間 ネットで官公庁批判拘束も

後ろ手に手錠をされた取り調べの様子を再現する余文生さん=9月下旬、北京市内
後ろ手に手錠をされた取り調べの様子を再現する余文生さん=9月下旬、北京市内
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 「死ぬよりつらい思いをさせてやる」。警官が敵意むき出しの目ですごむ。北京の弁護士、余文生さん(49)は3年前に受けた中国当局の厳しい取り調べが脳裏に焼き付いている。

 きっかけは2014年に香港で起きた民主化デモ「雨傘運動」。同年10月、デモに賛同し拘束された北京の人権活動家を支援するよう弁護士仲間に頼まれた。本人との面会を当局に拒否され、ネット上で抗議すると2日後に拘束された。

 取り調べを受けた北京市第1看守所(拘置所)では鉄の椅子に座らされ、後ろ手に手錠をかけられた。1日13~18時間、その姿勢を続けると「死んだ方がましなくらい痛い」。手錠を外すと、手首は倍の太さに腫れ上がっていた。

 拘束は99日間に上り、最後は身に覚えのない罪を認めるよう迫られた。あたかも自白したように、「私は過ちを犯した」などというせりふを暗唱させられ、その姿を動画撮影された。起訴はされずに釈放となったが、長期の取り調べで腹膜が傷つき、開腹手術を受けなければならなかった。

 もともとビジネス分野専門の弁護士だった余さん。「逮捕状は一度も見せられなかった。中国の人権状況は問題があると思っていたが、ここまでとは…」。この体験を機に人権問題に取り組むようになった。今は中国国内の人権派弁護士でつくる団体に名前を連ねる。

   ◇    ◇

 12年に発足した習近平指導部は「依法治国」(法による国家統治)を掲げる一方、人権派弁護士への締め付けを強めてきた。

 15年7月9日には、中国全土の人権派弁護士ら約300人が一斉に拘束される「709事件」が発生。「5日間、一睡も許されずに気を失った弁護士仲間もいた」と余さんは明かす。自身も再度拘束された。

 当局の嫌がらせか、弁護士免許の更新が約2カ月認められず、所属する弁護士事務所から7月に解雇された。その後更新されたが、新しい事務所に入れず、今は失業状態だ。

 中国では、民主主義の実現を求める運動だけでなく、言論や信仰の自由といった法律に定められた市民の権利を守る活動さえも弾圧の対象となる。

 自由な言論活動を放置すれば、共産党の一党独裁を否定する「西側の価値観」が氾濫し、現体制を揺るがしかねない-。そんな危機感が当局の厳しい対応の背景に見え隠れする。

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 習指導部が締め付けるのは人権派弁護士だけではない。インターネット上の言論統制も矢継ぎ早だ。

 中国当局は6月にネット利用者の実名登録や、事業者に当局への協力を義務付けるネット安全法を施行。会員制交流サイト(SNS)のグループ内のやりとりを監視し、警察を侮辱する投稿などの法的責任を問う制度も今月から導入する。

 安徽省では9月、警察の飲酒検問について「雨が降っているのに検問するなんて、ばかか」とネット上に書き込んだ男性が拘束された。8月には、河北省の公立病院レストランの料理を批判し「それでも人民の病院か」と書き込んだネット利用者が一時拘束される騒ぎも起きた。

 人権活動家や市民が連携を深める場だったネットは、習指導部1期目の5年で、当局が個人の発言を監視する道具へと変わりつつある。「習指導部が言う法治とは、悪い法律で市民を抑え込むことだ」と余さんはため息を漏らす。

 集団指導体制から“習1強”へ突き進む中国。「鬼が何匹もいる状態より、1匹だけの方が怖い。暴れても誰も止められないから」。さらに自由が狭められる中国社会の将来を思い、余さんの表情が険しさを増した。 (北京・川原田健雄)

=2017/10/12付 西日本新聞朝刊=

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