ユダヤ票意識し強行 米大統領のエルサレム首都宣言 大使館移転実現は不透明

 【ワシントン田中伸幸】パレスチナや国際社会の反発にもかかわらず、6日に米国として初めて、エルサレムを公式にイスラエルの首都と認定したトランプ大統領。同時に「紛争解決への新たなアプローチの始まり」とも述べ、今後も仲介者として中東和平実現を目指す姿勢を強調した。しかし、米国内で今回の判断は「ユダヤ系保守層などトランプ氏支持層へのアピールにすぎない」との受け止めが強く、就任以来「和平実現は可能」と繰り返す主張は依然、説得力を欠いたままだ。

 「歴代の大統領は選挙戦では公約に掲げながら何もせず、和平も実現できなかった」。トランプ氏は6日の発表の際、前任の3人の大統領が問題を先送りしてきたと批判。自身は大使館移転の公約を守り、事態打開を図ると強調した。

 だが、トランプ氏の判断がイスラエル寄りなのは明らか。内容も現状の追認で具体性に欠け、米国内ではユダヤ系保守層を意識した内向きの政策といった冷ややかな見方が広がる。

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 米議会は1995年、政府に大使館のエルサレム移転を求める法案を可決。しかし、歴代大統領は半年ごとに実施を延期し、トランプ氏も次の判断期限が今月4日に迫っていた。

 実はトランプ氏は、今年6月の判断時に「延期」の決定を下していた。ところが8月に南部バージニア州で白人至上主義者と反対派が衝突した際、反ユダヤの白人主義者らを擁護するような発言をしたため、政権の経済政策の司令塔で、ユダヤ系のコーン国家経済会議委員長が激怒。辞任が取り沙汰されるなど、ユダヤ系の反発を買っていた。

 年明けに政権発足1年を迎えるものの大半の重要公約を達成できず、政権支持率も低迷する中での今回の発表について、政府関係者は「親イスラエルの米国人の信用が高まる」と解説する。一方、別の外交担当者は、中東の反発を承知で踏み切った政策転換を疑問視。「反イスラムの国内支持者向けに、単にイスラム圏に厳しく接する姿を見せたいということなのか。意味が分からない」と述べた。

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 トランプ氏の言う和平への「新たなアプローチ」も不明確だ。トランプ政権の中東政策は、娘婿でユダヤ系のクシュナー大統領上級顧問らホワイトハウス主導だが「成果を示せていない」(ニューヨーク・タイムズ紙)のが実情。トランプ氏は6日、ペンス副大統領を近く中東に派遣することを明らかにし、和平への関与を続ける方針を示したが、具体策については当事者に対話を呼び掛ける程度だ。大使館移転についても時期を語らず、任期中の実現は見通せない。

 従来の米政権で中東政策の中心だった国務省がティラーソン国務長官名で出した声明でも、トランプ氏の判断が「恒久平和につながると固く信じる」と内容は抽象的。一方で声明は「(中東での)米国人の安全確保へ強力な対策を講じる」と言及し、和平を模索するための政策転換が新たな暴力や混乱を生みかねないことを認める格好となった。

=2017/12/08付 西日本新聞朝刊=

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