「五輪で融和」市民複雑 スケート競技実施の江陵市 「私たちは一つ」「政治ショー」

女子アイスホッケーの南北合同チームを応援するという韓国人夫婦=10日午後、江陵市
女子アイスホッケーの南北合同チームを応援するという韓国人夫婦=10日午後、江陵市
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 【江陵・丹村智子】平昌冬季五輪でスケート競技などが行われている江陵(カンヌン)市は、1996年に北朝鮮の潜水艦が座礁し、上陸した工作員との銃撃戦で市民が巻き込まれた事件があった都市だ。開会式から一夜明けた10日、北朝鮮側が韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領に訪朝を要請するなど、南北融和ムードも広がる。同じ民族による国家分断の長い歴史の中で、平和への願いと警戒心が交錯する韓国の人々の思いを江陵市で聞いた。

 「北朝鮮を歓迎します。私たちは一つ! 平昌で会いましょう」。競技が行われている市内の「オリンピックパーク」のすぐそばには、労働組合設置の横断幕が掲げられている。そこから車で10分ほど離れた「コーヒー通り」では、ビーチ沿いに飲食店が並び、地元の若者や五輪観戦の観光客でにぎわっていた。

 「同じ民族の北朝鮮が一緒に参加するのは意義深い。合同での聖火リレーにも感動しました」。ソウルから観戦に来た李(リ)ミジさん(23)は融和ムードを歓迎。姉のヒョンジさん(31)も「両国の首脳級が開会式で同席した姿は、国際社会に和平に向けた姿勢を伝えられたと思う」と感激した様子だ。

 一方で、地元出身の70代男性は「地元での五輪開催は誇らしいが、統一旗を掲げた入場行進は政治的パフォーマンスだ」と吐き捨てるように話した。北緯38度線近くで生まれ、故郷は一時北朝鮮の領土となったこともあるという。「北への関心は人一倍高いが、今回のパフォーマンスが次につながるとは思えず、融和ムードも結局は一時的に終わる」と手厳しい。

 元朝鮮日報の記者の馬貫彦(マシルオン)さん(76)は、「北朝鮮への感情は世代によって違う。私たちの世代は北朝鮮の指導部を全く信用していない。五輪後に、彼らが核ミサイルを諦めるとは思えない」と断言した。

 江陵市で生まれ育った金〓順(キムヒュンソン)さん(77)は、60年代に北朝鮮の武装兵士が、近隣地域で多くの市民を拉致した記憶が脳裏に焼き付いている。五輪の成功は願いつつも「北朝鮮のやりたいように融和を進めるのはどうか」と疑問視した。

※〓は「火へん」に「同」

=2018/02/11付 西日本新聞朝刊=

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