南北首脳会談現実味も 北朝鮮が訪朝要請 韓国取り込み狙う 日米、文氏の対応注視

 【ソウル曽山茂志】北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の特使として韓国を訪れている妹の金与正(キムヨジョン)氏が10日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領に初の訪朝を要請した。文氏は前向きな姿勢を示し、2007年以来となる3回目の南北首脳会談が現実味を帯びてきた。ただ、厳しい制裁で追い込まれた北朝鮮が、文政権を取り込んで日米との分断を図ろうとしているとの見方は根強く、日米など関係国は、南北融和に前のめり気味な文氏の対応を注視している。

 「大統領が統一の新たな扉を開く主役になって、後世に永遠に残る姿を見せてほしい」-。ソウルの大統領府で開かれた昼食会の場で、与正氏が文氏を持ち上げると、文氏は同席した政権幹部2人が00年と07年の南北首脳会談に直接関わったことを紹介。「この2人を登用したことをみても、私が南北関係を早く活発に発展させようとしているかが、分かるだろう」と胸を張った。

 ともに韓国各地の特産品を楽しんだ昼食を含め、3時間近くにわたった会談は終始、和やかな雰囲気だったという。「五輪休戦」から一気に首脳会談へ。昨年5月の就任時から金正恩氏と「条件が合えば会う」と公言してきた文氏が、平昌冬季五輪・パラリンピック終了後、高官団を北朝鮮に派遣して、3回目の南北首脳会談の調整に入るとの観測が早くも浮上している。

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 北朝鮮が、五輪をきっかけに急速に韓国との融和に転じた背景には、核・ミサイル開発の代償として国際社会から孤立し、厳しい制裁を受け続けている現実がある。慶応大の小此木政夫名誉教授(現代韓国朝鮮論)は「昨年からの制裁の効果が表れ、金正恩指導部が焦り始めた」と指摘。伝統的支援国家の中国まで1月に原油供給の制限に踏み切り、「国内経済の疲弊がさらに深刻化する危機に直面している」とみる。

 過去2回の南北首脳会談はいずれも韓国は「親北政策」の左派政権。2回目の首脳会談に大統領秘書室長として関わった文氏の両親は、現在の北朝鮮出身でもある。北朝鮮は文政権を「くみしやすい相手」(日韓外交筋)として取り込み、国際社会の包囲網を突破する生き残り戦略を描いているとみられる。

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 訪朝要請を前向きに受け止めた文氏だが、一方で「米朝の早期対話も必ず必要だ」と、くぎを刺すことも忘れなかった。

 「対話は非核化が出発点」(ペンス副大統領)との立場を変えない米国と、1月1日に金正恩氏が「核武力の完成」を宣言した北朝鮮がすぐに歩み寄るのは困難だが、朝鮮半島での軍事衝突を避けたい文氏は米朝の“仲介役”として存在感を示そうとしている。

 当面の焦点は、五輪・パラリンピック後に延期された米韓合同軍事演習の扱いだ。米国は予定通り実施する構えだが、文氏が縮小や延期を米国に呼び掛けて、南北首脳会談の環境づくりを進めるとの見方もある。

=2018/02/11付 西日本新聞朝刊=

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