ロヒンギャ問題、国際社会は批判より支援を 根本敬・上智大教授に聞く ミャンマー スー・チー政権2年

根本敬・上智大教授
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 ミャンマーでアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が主導する政権が発足して30日で2年を迎える。隣国バングラデシュに約70万人が逃れるなど、混迷が深まっているイスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題を巡る政権の評価について、上智大の根本敬教授(ビルマ近現代史)に聞いた。 (聞き手・バンコク浜田耕治)

 スー・チー氏が率いる政権の2年間は、予想通り荒波にもまれ、大変な苦難に直面した。最も大きいのはロヒンギャ問題だろう。ノーベル平和賞受賞者のスー・チー氏に対する国際社会の風当たりは強い。

 忘れてならないのは、スー・チー氏はロヒンギャ問題と関係のある軍(国防)、警察(国内治安)、国境問題の3分野に対する指揮権を持っていないということだ。軍政下で起草された現行憲法は、3分野について軍によるコントロールを認めている。実質政権トップのスー・チー氏であっても、手は出せないのだ。

 そんな中でも、彼女は解決へ向けた努力をした。2016年、軍の反対を押し切って、コフィ・アナン元国連事務総長をトップに据えた諮問委員会を発足させた。諮問委は昨年8月、3世代続けて国内に住むロヒンギャに国籍を与え、移動の自由も認めるよう促す前向きな答申を出した。

 スー・チー氏としては答申を通じ、時間をかけて反ロヒンギャ感情が強い国民に納得してもらう戦略だったのだろう。不運なことに答申の翌日に襲撃事件が起き、ロヒンギャ難民の流出が始まったが、スー・チー氏はその後の演説で、難民の帰還とともに答申を尊重することを約束している。

 国際社会がスー・チー氏だけの責任を追及して辞任に追い込んだら、その後に何が起きるかを考えてほしい。彼女が姿を消せば、ミャンマーでは軍の影響力が一層強まり、ロヒンギャを取り巻く状況が悪化するのは間違いない。国民が願う憲法の改正も遠のく。

 国際社会に求められるのは、長期化が予想されるロヒンギャ難民キャンプへの支援とともに、諮問委の答申を具体化させ、実行するようミャンマー政府に強く働き掛け、手助けすることだ。それこそが、ロヒンギャ難民の安全な帰還につながる唯一の道だと思う。

【ワードBOX】ロヒンギャ問題

 ロヒンギャはミャンマー西部ラカイン州に暮らすイスラム教徒少数民族。国内では不法移民と見なされ、国籍も与えられていない。昨年8月にロヒンギャ武装集団が警察施設などを襲撃。その鎮圧を名目にミャンマーの軍が虐殺やレイプなどを繰り返したとされ、約70万人が隣国バングラデシュに脱出した。国連は「民族浄化」だと激しく非難。1月に開始予定だった難民帰還も延期されたままだ。

=2018/03/30付 西日本新聞朝刊=

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