【特派員オンライン】ほほ笑みが消えた理由とは

 「ほほ笑みの国」。タイはそう呼ばれる。政府の観光庁も率先してこのフレーズを使うが、ほほ笑みが消えてしまった女性のニュースが話題を呼んだ。

 ドンムアン空港で伝統衣装に身を包み、到着した中国人団体客を出迎えるタイ人女性。1人ずつ首に花輪を掛けてカメラに納まるのだが、とろけるような笑顔を見せるのは撮影の一瞬だけ。すぐに仏頂面に戻ってしまう。添乗員が写した映像がインターネットで拡散し、中国ではパロディー動画まで登場した。

 すると今月9日、タイの観光警察が動いた。「タイのイメージを傷つけた」として、雇用主の写真サービス会社と出迎え役の女性を呼び出し、記者会見を開いて国民に謝罪させたのだ。女性は事実上の解雇処分となり、「その日は本当に暑くて疲れていた」と話したという。

 タイ人の知人は「仕事なのだから手抜きをした彼女が悪い」と手厳しい。一方で、女性は日給340バーツ(約1200円)で、1日に数百回も作り笑いをしなければならなかったとの報道もある。責められるべきは誰なのか。官民を挙げた観光振興の裏で、タイのほほ笑みがすり減っていくのはどこか寂しい。 (バンコク・浜田耕治)

=2018/05/15付 西日本新聞朝刊=

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