北朝鮮、慌てて低姿勢 米の反発読み違え? 制裁解除頼みの正恩氏苦境

 【ソウル曽山茂志】トランプ米大統領が24日、史上初の米朝首脳会談の中止を突然発表したことを受け、北朝鮮は25日朝に慌てて金桂冠(キムゲグァン)第1外務次官名の声明で考え直すよう訴えた。非核化の先行実施を求める米国に反発し続けてきた北朝鮮が一転して「平身低頭」になったのは、トランプ氏の強硬姿勢を読み違えたことをうかがわせる。制裁解除を見込んで「経済建設」という新たな路線を掲げた金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が置かれた苦しい状況も背景にありそうだ。

 「トランプ氏が、過去のどの大統領もできなかった英断で(米朝)首脳会談という重大な出来事に向けて努力してきたことを、内心で高く評価してきた」。正恩氏から委任されたとされる桂冠氏の声明は、米朝首脳会談の中止通告を「意外であり、遺憾」としながらも、事実上の「謝罪文」(韓国の専門家)とも受け止められる内容だった。

 首脳会談中止の引き金になったとされる崔善姫(チェソンヒ)外務次官によるペンス米副大統領らを名指しして中傷した24日の発言も、「一方的な核放棄を迫った米国側の言動に対する反発にすぎない」などと弁明。国営メディアを通じた崔氏の発言は北朝鮮指導部の姿勢を表しているはずだが、「指導部が個人の発言として、崔氏の責任を追及する可能性がある」との予測も出ている。

 北朝鮮が核開発の主要施設の一つである豊渓里(プンゲリ)核実験場を廃棄した直後に米朝首脳会談の中止を通告されたため、当初は正恩氏が強く反発するとの懸念もあった。北朝鮮情勢に詳しい韓国の世宗研究所の鄭成長(チョンソンジャン)統一戦略研究室長は「正恩氏が予想外に柔軟な姿勢を示したことで、米朝首脳会談実現の希望がつながった」と評価。トランプ氏をとりなすため、正恩氏が最も信頼する妹の金与正(キムヨジョン)氏や金英哲(キムヨンチョル)党副委員長らを訪米させる可能性も取り沙汰されている。

 北朝鮮は4月20日の党中央委員会総会で、国民に負担を強いて核・ミサイル開発に突き進んだ路線と決別し、経済建設に全力を注ぐ新たな路線を決定したばかり。高有煥(コユファン)・東国大北朝鮮学研究所長は「米国との交渉が決裂して国際社会の制裁がさらに強化されれば、正恩氏が指導者としての信頼を失う恐れがある」と指摘する。

=2018/05/26付 西日本新聞朝刊=

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