天安門事件29年、統制強く 遺族高齢化、風化を懸念 若者に無関心や正当化も

 【北京・川原田健雄】中国で民主化を求める学生らが武力弾圧された1989年の天安門事件から4日で29年となった。中国共産党は事件に関する言論統制を徹底しており、この日も北京市の天安門広場では、追悼活動や政府批判を警戒して厳戒態勢が敷かれた。遺族は真相解明を訴えるが、事件の風化も進んでいる。

 「ここで何をしている。身分証を見せろ」。午前11時前、記者が天安門広場近くで写真を撮っていると、背後から鋭い目つきの警察官が近づいてきた。数十メートル離れた安全検査所に連れていかれ、所持品を全て点検された。取材メモも1枚ずつめくってチェックされた。

 警察官は「取材には所管部門の許可が必要だ」と退去を要求。なぜ広場に入れないのかと食い下がっても「外国人観光客は歓迎しているが、取材は許可がないと駄目だ」と繰り返した。検査所を離れた後も、警察官がつけてきてこちらを監視し続けた。

 観光名所でもある広場は通常、パスポートなしで入れるが、この日は認められず、戸惑う外国人観光客の姿が見られた。当局がいつも以上に神経をとがらせているのは間違いない。

   ◇    ◇

 「悲惨な事件は歴史になったが、災難は終わっておらず、傷口も癒えていない」。事件で子どもを亡くした親の会「天安門の母」は5月末、習近平国家主席宛ての声明を発表。「真相、賠償、責任追及」を求め続けると訴えた。しかし、会員のうち既に51人が他界し、残る128人も大半が70歳を超える。中心メンバーは当局の監視下に置かれているのが実態だ。

 事件は、軍が学生らに発砲して多数の死者を出しただけに、党の求心力低下を懸念する中国当局は、市民が事件の情報に触れないよう統制を強めている。

 国内では事件に関する報道はなく、交流サイトでも天安門事件を連想させる言葉は書き込みや閲覧ができない。この日もNHKの海外放送が天安門事件について報じようとすると、画面が突然真っ暗になった。

 事件を知らない若者も増えている。北京に住む20代男性は「ほとんど話題にしない。20代前半は特に関心が薄い」と話す。20代の男性会社員は、事件当時デモに参加した両親と話した結果「武力弾圧は正しかった」と思うようになった。「民主化せずに共産党が主導したから急速な経済発展を実現できた。両親も『当時の自分たちは幼稚だった』と反省していた」と語った。

=2018/06/05付 西日本新聞朝刊=

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