米朝会談は正恩氏に軍配? 米韓国内、共同声明に不満 「平和解決へ」開催は評価

 【シンガポール田中伸幸】シンガポールで12日に行われた史上初の米朝首脳会談の結果を受け、米国や韓国では、一時は武力衝突につながりかねないとの懸念が高まった北朝鮮の核・ミサイル問題が、外交による解決に向けて動きだした-との一定の評価が上がった。一方、北朝鮮との信頼醸成を優先させ、トランプ米大統領が金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に妥協しすぎたとの指摘も少なくなく「勝者は正恩氏」との声も漏れる。

 首脳会談を終え13日に帰国したトランプ氏に対し、ペンス副大統領がツイッターで「朝鮮半島の平和に一歩近づいた。大統領の確固たるリーダーシップのおかげだ」と称賛するなど、トランプ政権は米朝会談を国民向けにアピールするのに躍起だ。ホワイトハウスは「大統領が北朝鮮から非核化に関する歴史的な譲歩を引き出した」などと報じる好意的な報道をまとめてメールで発信した。

 背景には、トランプ氏に批判的なリベラル系だけでなくトランプ氏に近い保守系メディアからも、トランプ氏と正恩氏が署名したシンガポール共同声明は「あいまいな内容」との批判が上がっていることがある。

 米朝会談の開催自体については、米国だけでなく韓国や日本などでも「北朝鮮問題の対話による解決への道を開いた」「核計画を廃棄させるには正恩氏との会談で信頼を勝ち取ることが大事」などと評価される。

 だが、共同声明については北朝鮮の核廃棄の前提となる非核化の定義づけや、完全な非核化を実現するために欠かせない査察や検証に関しては全く触れられておらず、不満が大きい。米国の北朝鮮問題の専門家からは「非核化がいつ達成されるかなど、明確には何も得られなかった。失望以外にない」(ガルーチ元朝鮮半島担当大使)などと厳しい意見が上がる。

 トランプ氏が正恩氏との会談を突破口にして、非核化実現の詳細についてはポンペオ国務長官や実務者らの協議に委ねるトップダウンの外交手法についても、奏功するかどうか評価は分かれ、解決の長期化を懸念する声も聞かれる。

 韓国では米朝会談について「北朝鮮の完全勝利」「勝者は正恩氏」といった論調も。朝鮮日報は識者の話として「トランプ氏は正恩氏に体制保証を約束するという大きなプレゼントを与え、非核化で自分は何も得られなかった」と断じた。

 こうした批判に対し、トランプ氏は帰国の途上、ツイッターで「専門家たちは1年前は『正恩氏と会って戦争回避を』と言い、会って良い関係を構築すると『会うべきではなかった』と叫ぶ」と発信し、不快感をあらわにした。

=2018/06/14付 西日本新聞朝刊=

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