【特派員オンライン】米大使公邸の1枚の写真

 ソウルの駐韓米国大使公邸の玄関に、男が屋根に星条旗を突き立てる様子を写したモノクロの写真が1枚飾られている。日付は1950年9月。朝鮮戦争で北朝鮮に占領されたソウルを米軍主導の国連軍が奪回。旧米公使館(当時)を取り戻した際の写真だ。「歴史を忘れないためです」。案内役の米公使が説明してくれた。

 公邸近くのソウル市庁には南北融和をアピールする巨大な垂れ幕が掛かる。10年半ぶりの南北首脳会談と史上初の米朝首脳会談を経て、韓国は「平和定着」の期待に包まれている。北朝鮮の軍事挑発もなくなり、ソウル中心部にある在韓米軍基地に隣接する繁華街で見掛ける米兵士らの表情も柔らかくなったような気がする。だが、このまま順調に融和が進むとは思えない。突然決裂して再び緊張が高まる恐れも十分にある。

 昨年1月のトランプ米政権誕生以来、空席が続く駐韓大使に前太平洋軍司令官のハリス氏が指名された。北朝鮮への暗黙の圧力を狙った人選に違いない。着任後、平和ムードが広がるソウルの中心にある公邸で、ハリス氏は毎日あの写真を見て気を引き締めることだろう。 (ソウル・曽山茂志)

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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