タイ洞窟13人生還、奇跡起こした3つの理由 救助当局「誰も可能と思わなかった」

 【バンコク浜田耕治】タイ北部チェンライ県の洞窟に閉じ込められた地元サッカーチームの少年ら13人は、消息を絶ってから18日目に全員が生還を果たした。いずれも平均2キロほど痩せたが、健康状態は良好という。救助当局が「誰も可能とは思わなかった任務」を成功させた要因は何だったのか。関係者の話で探った。

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 「(真っ暗闇の洞窟内で)少年たちが通常の精神状態でいられたのは、チームが一つになったため。それはコーチのおかげだ」

 全員救出から一夜明けた11日、タイの保健当局者はこう強調した。称賛したのは最後の1人として救出された男性コーチ、エカポンさん(25)の統率力だ。

 仏門で過ごした経験もあるエカポンさんは、発見されるまでの9日間、自らは我慢してスナック菓子などの少ない食料を12人の少年に分け与えていた。少年たちに体力を消耗しないよう指示し、瞑想(めいそう)などを勧めていたとも報じられた。

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 経験豊富な外国人潜水士の力を結集し「救助チームも一丸となった。それが成功の鍵」と指揮を執ったナロンサク前知事は言う。

 救出作業は難航必至とみられていた。「雨期が終わるまで、あと数カ月待った方がいい。それほど洞窟内潜水は危険だ」。捜索活動に参加したベルギー人潜水士はこう語っていた。

 当局は1人の救出に要する時間を当初5時間と予想していたが、実際は最大でも3時間40分。洞窟内の水位を下げることに成功したことが大きかった。

 当局は川の流れをせき止めて流れを変え、1日に3万2千立方メートルの雨水の流入を防いだ。ポンプでの排水も続けた。この結果、洞窟内の浸水箇所の一部は歩けるようになったという。

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 こうした排水作業は市民の協力なしには不可能だった。くみ出された大量の水で約200ヘクタールの水田に被害が出たが、不満の声は少ない。「13人の救出のためなら、やむを得ない」と農家は口をそろえた。

 国民の9割以上が信仰する仏教の教えには「許し」や「善行」の勧めがあり、その影響が大きいとの見方は多い。雨期に洞窟に入るという13人の軽率な行動に対する批判は少なく、支援の輪が広がった。

 首都近郊で固唾(かたず)をのんでニュースを見守っていたという元高校教諭のパイピットさん(65)は「人の命は何よりも重い。その一点でタイ人は団結した」と話す。その上で「責められるべきは注意喚起が不十分だった公園管理者で、少年たちではない」と語った。

=2018/07/12付 西日本新聞朝刊=

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