日中、「新たな関係」模索 平和友好条約40年 歴史認識、領土残る火種

 日中両国が平和友好条約に調印して12日で40年。沖縄県・尖閣諸島の国有化問題で冷え込んだ関係は、首脳往来に向けて調整が進むまでに回復したが、歴史認識や領土を巡る対立はなおくすぶる。国際社会で存在感を増す中国とどう向き合うか。新たな関係構築へ日本の模索が続く。 (北京・川原田健雄、前田絵)

 「日中両国が協調を強めることが国際社会の期待に応えることになる」。今月2日、シンガポールであった日中外相会談。河野太郎外相の呼び掛けに、中国の王毅国務委員兼外相も「中日関係は正常な軌道に戻った。良い局面を不可逆的なものにしたい」と応じた。

 政府は友好条約40年の節目を機に、中国との関係改善に本腰を入れ、5月には中国首脳として約7年ぶりとなる李克強首相の来日にこぎ着けた。今後、安倍晋三首相の年内訪中、来年6月に見込む習近平国家主席の来日を実現し、経済協力や北朝鮮問題での連携強化につなげたい考えだ。

 追い風となっているのが米中の貿易摩擦。安倍首相の訪中について中国側は当初、国内の反日感情に配慮し、中国で開催予定の次回日中韓首脳会談に伴う訪中を日本側に打診していた。しかし貿易摩擦が激化するにつれて首相の単独訪中に前向きな姿勢を示すようになったという。中国にとって日本は米国に次ぐ貿易相手国。対日関係を改善し、貿易摩擦の国内への悪影響を抑えたい思惑がのぞく。

 日中両国は中国が掲げる経済圏構想「一帯一路」を念頭に、第三国でのインフラ整備の協力で一致しており、日本の経済界も前向きだ。第1弾としてタイでの鉄道敷設事業が有力視され、政府は10月の実現を目指す首相訪中を前に、中国側と担当者会合を開いて協議を具体化させる。

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 だが、本格的な関係改善には多くの課題が残る。

 日本が2012年に国有化して関係が悪化した尖閣諸島周辺では、中国公船の領海侵入が常態化。08年に共同開発で合意した東シナ海のガス田も、中国側の一方的な開発が続く。15年以降、スパイ行為に関わったなどとして中国国内で邦人の拘束が相次いでいることも懸念材料だ。

 13年に靖国神社を参拝した安倍首相の歴史認識も火種となり得る。中国の歴史学者は「中国政府は国民の不満を国外へ向けるため、日本の歴史問題を取り上げてきた面がある」と指摘。貿易摩擦の国内への悪影響が鮮明になれば、習指導部が再び「歴史カード」を切って日本を不満のはけ口とする恐れも否定できない。

 両国は08年、国交正常化を宣言した1972年の日中共同声明から数えて四つ目の政治文書となる「戦略的互恵関係の包括的推進に関する共同声明」を発表。両国関係を「友好」から、共通利益を目指す「互恵」に格上げした。

 しかし中国は13年、尖閣諸島上空に防空識別圏を設定するなど空と海から東シナ海進出を強めている。10年には中国の国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界2位となり、経済分野の立ち位置も逆転した。

 両国を取り巻く環境が様変わりした今、新たな関係を提起する「第5の政治文書」が必要との声も日本側からは出ている。ガス田共同開発に向けた交渉再開など、首脳往来に合わせて具体的な成果を上げられるかも今後の焦点となる。

=2018/08/11付 西日本新聞朝刊=

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