一帯一路に協力どこまで 東南アジア開発競争の主戦場 日本、存在感の維持図る 中国は国際社会の信頼狙う

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 12日の日中首脳会談で、中国が掲げる経済圏構想「一帯一路」を巡り、両国が第三国での事業協力を推進する方針が確認された。第1弾として候補に挙がるのがタイの高速鉄道建設だ。だが東南アジアは日中がインフラ開発事業の受注を競う「ガチンコ勝負」の主戦場。どこまで協力が広がるか見通しにくいのが実情だ。

 「一帯一路」を巡る日中の歩み寄りの背景には、それぞれが抱える事情が透ける。中国は東南アジアやアフリカなどで鉄道や道路、港湾などのインフラ開発を積極的に進めてきたが、最近は採算性の度外視や透明性に乏しい支援のあり方に国際社会の一部から「新たな植民地主義」などと批判が出ており、マレーシアが着工済みの大型鉄道事業の中止を決めたほか、各国で計画の見直しを求める声が上がり始めている。

 一方、日本も政府開発援助(ODA)予算が1997年のピーク時から半減し、各地の受注競争で敗れる例が続出。東南アジアは日本の2国間援助上位10カ国のうち6カ国を占めるが、それでも中国の攻勢で存在感の低下が目立つ。

 国際社会で信頼を得たい中国と、存在感を維持したい日本-。日中協力はこうした両国の思惑が一致した結果とみられる。

 日中両政府は月内にも、「一帯一路」を巡る官民委員会を開き、協力事業の具体的な検討に入る。その第1弾の候補に挙がるタイの高速鉄道計画は「もともと日中が受注を狙い、タイが双方を競わせていた」(みずほ総合研究所の酒向浩二上席主任研究員)。さらにタイには中国と領土や領海を巡る対立がなく「日中協力が成立しやすい数少ない国」(同)という。

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 カンボジア南部の港湾都市シアヌークビルには日中が主導し、2012年と08年にそれぞれ開業した二つの経済特区がある。互いの距離は10キロ余りと近いが、その明暗ははっきりと分かれている。

 円借款で建設された工業団地「シアヌークビル港経済特区」は26社の企業進出を目標としていたが、6年後の現在もわずか数社にとどまる。一方、中国主導の「シアヌークビル経済特区」は100社以上が進出。日本側の特区から移転した企業もあるという。

 中国側特区の強みは賃料の安さに加え、その規模の大きさにある。面積は日本側の10倍以上。周辺では中国資本によるカジノや商業施設、マンションなどが相次ぎ建設され、単なる工業団地を超えた「都市」を建設する勢いだ。危機感を強める日本の国際協力機構(JICA)は昨年、運営会社に異例の直接出資を行い、巻き返しを図っている。

 国際支援の日本側関係者によると、中国は支援の重点を各国の港湾地域に置いているという。「港湾整備と周辺の経済協力区(工業団地)、都市開発の3点セット」による開発で港湾地域の主導権を握り、日米などの進出を阻んで「インド太平洋地域の安全保障強化を狙う構想」とみられる。

 日本もJICAが7月、インドネシア政府との間で、離島の漁港整備に25億円を無償協力する契約を結んだ。中国が領有権を主張して対立する南シナ海のナトゥナ諸島が含まれ、JICAは「南シナ海は日本の安全保障上の戦略的拠点であり、その観点からも重要な事業」と位置づける。

 東南アジア政治に詳しい熊本県立大の白石隆理事長は「経済規模で圧倒する中国と正面から争っても日本は不利。組織づくりや制度設計、人材育成など強みが生かせる分野を選択的にやるべきだ」と指摘。みずほ総研の酒向氏は今回の日中協議で「採算性や透明性の確保など課題改善を中国に促すことで、東南アジア諸国にも日本の存在感を示せる」と期待する。

【ワードBOX】一帯一路

 中国の習近平国家主席が2013年に提唱した経済圏構想。中国を拠点に、中央アジアを経て欧州に至る陸路の「一帯」と、東南アジア-インド-欧州を海路で結ぶ「一路」を想定し、周辺各国で港湾や鉄道、道路などのインフラ整備を進める。構想の推進を念頭に、15年に中国主導の国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)が設立された。

=2018/09/13付 西日本新聞朝刊=

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