【特派員オンライン】カジノの町で出会った女性

 1万ウォン(約千円)を渡したことを今、少し後悔している。韓国北東部の江原道の田舎町。韓国で唯一韓国人が入場できるカジノ「江原ランド」に近い商店街の一角の小さな食堂で、その女性(56)に出会った。

 「わたし、この町のことはよく分からないの」。地元の話を尋ねても、話がうまくかみ合わない。日本人だから警戒されているのかと思って注文した焼き魚定食を食べていると、突然横に座って身の上話を始めた。

 女性はかつて韓国南部の町でホテルを経営して裕福な暮らしをしていた。しかし、ある日、夫を交通事故で亡くして人生が狂った。つらさをまぎらわせたくて、江原ランドに通い始めた。数カ月で3億ウォン(約3千万円)を失い、ホテルも手放した。帰る場所がなくなり、半年ほど前からこの食堂で働き始めたのだという。

 貴重な話を聞かせてくれた感謝の気持ちも込めて、1万ウォンを渡した。だが翌日、その町で会った「ギャンブル依存症」に詳しい牧師の話を聞いて、怖くなった。「依存症は簡単には治らない。少しでもお金があれば、カジノに行ってしまう」。まさかね。 (ソウル・曽山茂志)

=2018/09/22付 西日本新聞朝刊=

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