「九州とタイの関係を深める」 1日、福岡に開設 タイ総領事インタビュー 「ビザ発給は来春から」

バンコクで取材に応じたアッタカーン・ウォンチャナマー総領事
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 【バンコク浜田耕治】タイ政府は1日、日本国内で大阪市に次いで2カ所目となる総領事館を福岡市に開設する。アッタカーン・ウォンチャナマー総領事(56)が西日本新聞の取材に応じ、「経済や貿易、観光、文化、教育といった全ての分野でタイと九州の関係を深く、良くしたい」と抱負を語った。

 -タイへ渡航するための査証(ビザ)の発給はいつから可能になるか。

 「福岡総領事館の管轄は九州・沖縄と中国地方の13県です。臨時事務所でスタートしますが、ビザ発給などの本格的な業務は、正式な事務所に移転した後の来年4、5月ごろに開始します。管轄エリアに住む人は福岡でビザの取得ができるようになります」

 -総領事館の開設場所として福岡を選んだ理由は。

 「福岡は(ハイテク企業が集積するなど)経済のポテンシャルが高い。また、人々はタイに対して非常に関心を持っています。九州に住む人がタイで投資や貿易などのビジネスをする際は、タイ政府としても便宜を図るようにしたいと考えました」

 -2016年の熊本地震の際、在留タイ人の保護に苦労したと聞いている。

 「その通りです。福岡に総領事館があれば、東京の大使館や大阪の総領事館の負担が軽くなり、タイ人保護の観点からも便利になります」

 -日本や九州の印象は。

 「東日本大震災の際、タイ政府の一員として来日しました。互いに助け合い、勤勉で諦めない日本人の姿に感銘を受けました。日本に住むのは上智大への留学時代などを含めて今回が4回目。九州は食べ物がおいしい。『食』の分野もこれからの交流の一つになると思います」

 -趣味は。

 「運動を頑張ることです。日本語の勉強が好きで、海外勤務の際も日本の歌をよく聞いていました。管轄する13県に暮らすタイ人留学生に会う機会をつくりたい。留学生時代に訪問した思い出をたどって、別府や熊本にも行きたいです」

■相互利益へ、問われる本気度

 タイ政府が福岡県に総領事館を開設する狙いの一つは、九州からの投資の拡大だ。東南アジアの優等生だったタイは、成長の曲がり角にある。高所得国入りする前に経済が停滞する「中所得国のわな」を避けるため、労働集約型産業からの脱却を進めている。

 9月29日、JR博多駅前であった総領事館開設記念イベント。在日タイ大使館のブースには大型模型が置かれ、政府が力を入れるタイ東部の経済特区「東部経済回廊(EEC)」を大々的にPRした。ロボットやバイオ、ITといった成長が見込める10分野の産業を誘致する。日本の地方にある先端技術を持つ中小企業も呼び込みたい考えで、先駆けとして九州に白羽の矢を立てた。

 関係者によると、タイ政府は総領事館開設に際し、福岡県がEEC視察団に自治体最多の39社44人を送り込むなど投資意欲が高いことを重視したという。今年2月に来日したタイのソムキット副首相は、2013年創業のスカイディスク(福岡市)幹部と面会し「貴社の技術を、ぜひタイに導入してほしい」と直々にラブコールを送った。

 人工知能(AI)を使って工場の稼働データを解析し、欠陥リスクの高い箇所を事前に探し当てる-。タイ側が着目したのは同社の先端技術だ。タイには自動車などの工場が集積するが、生産技術のノウハウが蓄積されずに効率が低迷する課題に直面しており、ぴったり当てはまった。スカイディスクも「日系メーカーを中心に商機があり、東南アジア全体に展開できる」(同社シニアコンサルタントの西村江文氏)と狙いが一致。年度内のタイ進出を目指しており、総領事館開設後の“第1号案件”となる可能性が高い。

 しかし、タイ側の期待通りに、先端技術を持った九州企業がどれほど進出に動くかは不透明だ。タイ政府は法人税減免など手厚い投資優遇策を用意したというが、日本側には「現政権の政策が継続されるか不透明」といった不安もある。

 人口減などで日本市場が縮小する中、東南アジアに活路を求める企業にとって、社会インフラや市場規模をみれば「タイが最も有望な進出先」(エコノミスト)であるのも確か。総領事館の開設を一過性の友好ムードではなく、関係強化の出発点にできるか。日タイ双方の本気度が問われることになる。(バンコク浜田耕治、川合秀紀)

=2018/10/01付 西日本新聞朝刊=

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