米政権、対北朝鮮“”進展”に腐心? ポンペオ氏、訪朝で前向き発言連発 国内には懐疑的見方も

 【ワシントン田中伸幸】ポンペオ米国務長官が北朝鮮の非核化を協議する東アジア4カ国訪問を終えた。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との7日の会談では、正恩氏が今年5月に坑道を爆破した豊渓里(プンゲリ)の核実験場廃棄検証のため、査察官を招く用意があると表明。ポンペオ氏は「重要な進展があった」と繰り返し強調したが、トランプ大統領と正恩氏の再会談決定の発表はなく、米国内には成果に懐疑的な見方もある。中国の王毅外相との8日の会談では、貿易摩擦激化を背景に米中双方が不信感をあらわにし、北朝鮮への対応を巡る協調にも疑問を残した。

 ポンペオ氏は6~8日に日本、北朝鮮、韓国、中国をそれぞれ訪問。訪朝の成果として豊渓里への査察官受け入れを挙げた。検証は事務的な調整が整い次第できるだけ早く行われるとの見通しを示し「金委員長が受け入れ準備はできていると述べた」と強調した。

 しかし、米国内の北朝鮮問題専門家からは「北朝鮮が爆破した坑道の入り口を封鎖している場合、査察官がどうやって坑道の破壊状況を確認できるのか」といぶかる声が上がる。

 最大の関心事だった、トランプ氏と正恩氏との再会談の日時や場所についても決定に至らなかったとみられるものの、ポンペオ氏は合意に「かなり近づいている」と楽観視してみせた。

 「進展はこれからも続くだろう」と語るなど、ポンペオ氏が前向きな発言を連発するのは、米中間選挙が4週間後に迫り、与党の勝利を目指すトランプ氏に政権運営上の「失敗」は許されない状況下で、マイナスのメッセージは出せないとの事情がありそうだ。

 米国の識者らは、米朝首脳再会談で非核化に関する具体的な進展を示すため、実務レベルでの協議を積み重ねたいポンペオ氏ら米政権の中心メンバーに対し、トランプ氏は正恩氏との再会談で朝鮮戦争の終戦宣言に応じるなど、成果を急ごうとしていると指摘。

 ヘリテージ財団のクリンナー上級研究員は米メディアに「ポンペオ氏は進展がないのに、あえて『うまくいっている』という姿勢を示そうとしているようにみえる」と述べるなど、ポンペオ氏が政権内の意見の相違を隠しつつ、トランプ氏の北朝鮮政策が前進していると訴えるため腐心しているとの見方が広がる。

 一方、再会談の時期に関して中間選挙前の開催は厳しさを増している。トランプ氏は10月に入り週の半分以上、全米各地で与党候補の支援集会などを開催。正恩氏が訪米しない限り、外遊に時間を割く余裕はほとんどないからだ。

 そもそも、「一般の有権者にとって北朝鮮問題は選挙の争点になる関心事ではない」(外交筋)のが実情。非核化実現は見通せないものの、ポンペオ氏の訪朝など米朝間の対話が続いていることを示すだけでも、対北朝鮮政策が失敗しているとの批判をかわすことができ、トランプ政権にとって中間選挙前の再会談開催の必要性は高くないとみられる。

=2018/10/10付 西日本新聞朝刊=

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