トランプ氏「痛み分け」でも強気 再選視野、「成果」へ躍起

 【ワシントン田中伸幸】トランプ米大統領への審判となった中間選挙は、自身の懸命なてこ入れによって上院では与党共和党の過半数を死守したものの、下院は野党民主党に奪われる「痛み分け」に終わった。民主党は奪還した下院でトランプ氏に絡む巨額脱税などの疑惑調査を連発する方針。トランプ氏が守勢に立たされる局面が増えるのは必至だが、2020年の次期大統領選での再選を視野に、妥協ではなく、さらに強硬な政権運営で対決姿勢を鮮明にするとみられる。

 「トランプマジックだ」。トランプ氏は7日、現職大統領に不利な結果が出ることが多い中間選挙で、与党が獲得した上院の議席数を称賛する保守派論客の発信をツイッターで紹介し、選挙結果を「大きな勝利」と自賛した。

 トランプ氏にとって今回の選挙は逆風の連続だった。差別的な言動や銃規制への消極的な姿勢を嫌う女性や移民、若者らを中心に「反トランプ」の機運が高まり、昨年の上院補選などでは共和候補が相次ぎ敗退。中間選挙では、民主党のシンボルカラーである「ブルーウエーブ(青いうねり)」が起きるとの見方が広がり、9月中旬の世論調査では、民主党が上下両院を奪還する可能性が3割近くあるとの世論調査もあった。

 民主党が両院を支配すれば、16年大統領選に絡むロシア疑惑も含め、トランプ氏にまつわる数々の疑惑調査が行われるだけでなく、弾劾裁判に発展して大統領を罷免される可能性もあった。ただ、下院で弾劾訴追されても上院の3分の2以上の同意がなければ罷免はされない。トランプ氏が「上院過半数」を優先したのは、投開票の前日まで駆け回った地方遊説で、上院選の接戦州を繰り返し訪れたことからも明らかだ。

 自身が候補者ではないため、選挙への関心が低かった熱狂的な支持層に投票を促そうと、演説のたびに民主党を「抵抗勢力」と徹底的に批判。「共和党が負ければ景気が後退し、不法移民が大量流入する」と危機感をあおり続け、選挙戦終盤には突然、中間層向けの追加減税の検討を表明するなど財源悪化への批判などには耳を貸さぬ必死の選挙戦略を展開し、ブルーウエーブの影響が上院にまで及ぶことを食い止めた。

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 米国では早速、次期大統領選に向けた動きが加速する。「上院死守」を果たし、再選への期待が高まるトランプ氏に対して、共和党内から有力な対抗馬が出る事態は今は想定しにくい。

 とはいえ、安泰ではない。民主党が制する下院では予算編成や重要法案の審議が滞るなど政策遂行に大きな支障が出るのは必至だ。看板となっている米経済の「好景気」も腰折れの懸念がささやかれる。

 今回の選挙では、前回大統領選で事前の予想を覆してトランプ氏が勝利したペンシルベニア州などの上院選で共和党候補が敗北。「ねじれ議会」の影響で政権運営が停滞すれば、「反トランプ」のうねりが勢いを増す可能性は否定できない。

 こうした事態を見据え、トランプ氏は支持者をつなぎ留めるため、これまで以上に「成果」を示そうと躍起になるとみられる。特に大統領権限の大きい外交で、「米国第一主義」をさらに強硬に推し進めて「日本や中国などに通商分野で大きな譲歩を迫る可能性が高い」との観測が識者の間ですでに広がる。

 「米国を再建した」と豪語し、新たなスローガンとして「偉大な米国であり続ける」と叫ぶトランプ氏。選挙戦終盤に追加減税を打ち出したような、なりふり構わぬ言動が増えるのは想像に難くない。

=2018/11/08付 西日本新聞朝刊=

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