三大感染症の今 インドネシアの挑戦(下) 残る格差、増す民間支援

タヒル財団共同代表のダト・スリ・タヒル氏
タヒル財団共同代表のダト・スリ・タヒル氏
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ニラ・ファリッド・モレック保健相
ニラ・ファリッド・モレック保健相
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 「多くの国民が感染症で死亡している。成功した私は、この国に役立つことをする義務がある」

 東南アジア最大級のマヤパダ銀行などを経営する「マヤパダ・グループ」の創始者ダト・スリ・タヒル氏(66)はこう語り始めた。インドネシア財界の最有力者の一人だ。

 国際機関「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド=GF)」がこれまでインドネシアに投じたのは、8億4400万ドル。出資者には各国政府だけでなく、民間企業や個人も名を連ねる。個人で最大の出資者は、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏の財団。タヒル氏の「タヒル財団」はそれに次ぐ。

 若いころに医師を目指したタヒル氏は、父の病気を機にビジネスを始め、銀行や不動産など幅広い事業で巨万の富を築いた。医療機関などへの直接の寄付ではなくGFに出資するのは、国が自立していくシステム構築を意識した資金運用に共感するからだという。

 「寄付よりも遠回りに見えるが、重要なのは継続的な支援をすることだ」。タヒル氏は語気を強めた。経済発展により感染症対策の国際支援が減額されつつある中で、民間による支援活動は対策を支える大きな潮流となる可能性がある。

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 貧富の格差が大きいインドネシアでは、医療の格差も深刻だ。

 政府は、誰もが医療サービスを受けられるよう2014年に国民皆保険制度を導入するなど、経済発展を受けて医療政策に力を入れる。ただ、政府予算に占める保健関連費は約5%にとどまり、都市と地方では医療サービスにまだ大きな差がある。

 ニラ・ファリッド・モレック保健相は「この広大な島国では、インフラ整備や村落開発など優先すべき事業が多い」と予算不足の理由を説明する。増え続ける人口に対応して保険医療サービスの支出も増えるので、三大感染症対策に力を入れたくても「政府資金だけでは足りない」という。

 モレック保健相は国際支援からの“卒業”の目標時期は明言せず「大事なのは教育だ」と繰り返した。「治療だけでなく予防の大切さを理解し、健康を維持する。国民の行動を変えなくてはいけない」

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 GFの戦略投資効果局長を務める國井修医師は「これからインドネシアに必要なのは自立していくための支援だ」と話す。限られた国際援助の資金をより深刻な地域に回すためにも、新興国の挑戦は注目されているという。

 日本は今後、外国人労働者に門戸を広げ、東京五輪・パラリンピックなどで多くの観光客を受け入れる。海外からウイルスが持ち込まれる危険性も増える。國井医師は力を込める。

 「世界の感染症の問題は日本と無関係ではない」

=2018/12/26付 西日本新聞朝刊=

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