習氏の強国路線抑制 昨年から一転 米中首脳会談を意識

 【北京・川原田健雄】米中貿易協議が大詰めを迎える中で開催された今年の全国人民代表大会(全人代)は、例年以上に米国を意識した大会となった。米中摩擦の長期化は中国の景気後退を加速させかねないため、習近平指導部は米国を刺激しないよう随所で配慮。強国路線を前面に打ち出した昨年から一転、「習カラー」は抑え気味となった。

 「中米が安定した関係を保つことは双方にも世界にも有益だ」「対抗よりも協力する方がいい」。15日、北京の人民大会堂で記者会見した李克強首相は対米関係の改善に繰り返し意欲を示した。

 米国へのメッセージはこの日だけではない。開幕日の5日に李氏が読み上げた政府活動報告では、昨年まで4年連続で言及してきた産業戦略「中国製造2025」に触れず、米国の批判に配慮。8日に記者会見した王毅国務委員兼外相は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する米国の圧力に反発しつつも「中米が対抗の道を歩むことにはならない」と協調姿勢を何度も訴えた。

 視線の先にあるのは、来月にも開催が取り沙汰される米中首脳会談だ。中国側はトップ同士の直接交渉で貿易摩擦の早期妥結を図りたい考えで、その前にトランプ米大統領を刺激したくない心理が働く。

 中国の今年の経済成長率は前年より減速するとの見方が多い。米中摩擦の影響で景気がさらに冷え込めば、雇用への深刻な打撃は避けられない。

 習国家主席は昨年の全人代で、国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を実現。「社会主義現代化強国」の実現を訴え、強大な権力を誇示した。しかし景気の悪化で失業者の増加など社会不安を招けば、批判の矛先は「1強」の習氏に向きかねない。

 この日、外国企業の権益保護強化をうたう外商投資法を、草案提示から約3カ月の異例の早さで成立させたのも、構造改革を求める米側の要求に応じる姿勢を示し、貿易協議を有利に進めたい習指導部の思惑がある。ただ、専門家や欧米メディアには実効性に懐疑的な見方もあり、来年1月の同法施行に向けた細則の整備が今後の焦点となる。

 米国は知的財産権の保護強化や外国企業に対する技術移転の強要禁止など合意事項を中国側に順守させる仕組みづくりを求めており、今後も厳しい要求を中国に突き付ける可能性がある。

=2019/03/16付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]