セウォル号沈没5年、遺族のテント撤去 韓国 やまぬ事故、風化懸念

仮設テントの撤去作業を背に、セウォル号沈没事故の真相解明を訴える遺族ら=18日、ソウル・光化門広場
仮設テントの撤去作業を背に、セウォル号沈没事故の真相解明を訴える遺族ら=18日、ソウル・光化門広場
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 【ソウル池田郷、釜山・丹村智子】韓国南西部沖で2014年4月、修学旅行中の高校生ら約300人が犠牲になった旅客船セウォル号沈没事故から5年の節目を前に、遺族らが事故の風化防止などを訴える拠点だったソウル市中心部の仮設テントが18日、撤去された。惨事は、政府の初動態勢や救助の在り方を巡り当時の朴槿恵(パククネ)政権を揺るがす問題に発展。その後も船舶事故は後を絶たず、遺族らは「真相究明は不十分で、国全体の安全意識醸成も道半ば」と指摘する。

 韓国大統領府に近いソウル市の光化門広場。沈没事故で高校生の娘を亡くした尹京姫(ユンギョンヒ)さん(41)は「娘の姿が今も目に浮かぶ。明日にでも生きて帰ってきそうで…」と声を振り絞った。

 事故は14年4月16日に発生。遺族の活動拠点となった仮設テントは同年7月に設置され、故人の写真を並べ、追悼し、事故の真相究明を訴えてきた。しかし、5年近く経過し、修学旅行中、事故に遭った高校では今年2月、亡くなった生徒の「卒業式」を行うなど遺族らは区切りと考え、テントについても市と協議し、撤去を決めた。

 事故後、運航会社の過積載や海洋警察のずさんな対応が明らかになり、国民的な批判が集中。朴氏が事故当日、約7時間半、行方が分からなかったことも問題化し、17年3月の罷免につながった。ソウル中央地裁は18年7月、政府の責任を一部認め、犠牲者1人当たり慰謝料2億ウォン(約2千万円)の支払いを命じた。

 朴前政権は、船舶運航の関連法を改正するなど安全規定を見直し、再発防止策を講じたが、船舶事故は依然、続いている。釜山市では今年2月、酒に酔っていたとされる船長が操船していた6千トン級のロシア船籍貨物船が海上橋に衝突して沖合に逃走。韓国内では飲酒運航だけをみても、18年までの5年間に530件摘発され、飲酒運航による事故も66件起きている。

 セウォル号事故で高校生の息子を亡くした家族協議会事務所長の金光培(キムグァンベ)さん(52)は「事故後、国民は具体的対策を求めたが、朴政権の対応は形式的だった。文在寅(ムンジェイン)政権の取り組みも過渡期にある」と指摘する。

 仮設テント跡地には、ソウル市が約2億ウォンの予算で犠牲者の追悼施設を設置する。市の担当者は「犠牲者や事故の記憶を語り継ぎ、安全意識を喚起する施設にしたい」と説明した。

=2019/03/19付 西日本新聞朝刊=

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