タイ政治、混乱再発も 「親軍」「反軍」の構図に転換 タマサート大客員研究員・水上祐二氏

水上祐二氏
水上祐二氏
写真を見る

 約8年ぶりのタイ総選挙(下院、定数500)では、親軍政政党が一定議席を獲得し、軍事政権が事実上継続する見通しとなった。この結果や今後について、タイ政治に詳しいタマサート大客員研究員の水上祐二氏(40)に聞いた。 (バンコク川合秀紀)

 予想外の結果だ。特に親軍政派の「国民国家の力党」が得票数で1位になり、タクシン元首相派のタイ貢献党とここまで接戦になるとは思わなかった。

 国民国家の力党が票を伸ばしたのは、タクシン派の地盤だった地方の農村部などでタクシン派から候補を多く引き抜いた戦略が当たったためだ。タクシン氏本人への支持は根強いが、今回の選挙の仕組みでは有権者は候補にしか投票できず、政党に投票できなかったことも影響している。

 タクシン派は低迷したが、反軍政を掲げた新未来党が第3党にまで躍進するのも予想外。若者はもちろん、クーデターや長年の混乱にうんざりしたリベラル層の票も集めたのだろう。「反軍政派」では下院の過半数をうかがうという結果は重要な意味を持つ。

 次期首相は、軍政が任命する上院議員も指名選挙に加わるため、おそらくプラユット暫定首相が選ばれるだろう。だが5月の国王戴冠式以降、国会が招集され、さまざまな混乱があり得る。

 親軍政派政権は連立の形になるが、経済閣僚などの重要ポストを政策理念が違う民主党などの相手に譲らざるを得ず、内紛が起こり得る。調査能力の高いタクシン派などは汚職などを徹底的に暴こうとするだろう。プラユット氏が首相となる本格政権が生まれたとしても軍政下で行使できた超法規的な権限を憲法規定でこれ以上使えず、政権運営ははるかにやりにくくなる。このため私は次期政権は行き詰まり、そう長く続かないとみる。

 選挙で印象的なのが、民主党の惨敗。タクシン派と民主党などが長年繰り広げた「赤シャツ対黄シャツ」の対立構図が終わり、安定か改革か、保守かリベラルかという構図に変わる転機になりそうだ。 (談)

=2019/03/26付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]