トランプ氏「政治的勝利」 ロシア疑惑・米報告書 「捜査妨害」なお火種も 民主、政権奪還立て直し急務

 【ワシントン田中伸幸】2016年米大統領選に関するロシア疑惑捜査で、トランプ大統領の陣営とロシアとの共謀が確認されなかったことは、当選の正当性が問われていたトランプ氏にとって「大勝利」(米主要メディア)にほかならない。政権の混乱が続き、再選がかかる来年秋の大統領選での支持離れが懸念される中、信頼回復への好材料になり得る。トランプ氏の資質を問い、政権奪還を目指す野党民主党にとっては誤算となっただけに、トランプ氏の捜査妨害疑惑や他の疑惑の追及を急ぎ、巻き返しを図る構えだ。

 24日の捜査報告書の概要公表後、記者団の前に現れたトランプ氏。朗報にもかかわらず表情は緩めず、疑惑捜査について「(私を)不当におとしめようとした行為は失敗に終わった」と激しく非難。ロシアとの共謀の存在を主張し続けた民主党を念頭に「相手方も捜査されることを望む」と繰り返しまくし立てた。

 ツイッターには、次期大統領選のスローガンの一つと公言する「偉大な米国であり続ける」と投稿。捜査結果を踏まえ民主党への攻撃をさらに強めながら、再選に向けた基盤固めを進める意向がにじむ。

 モラー特別検察官の捜査チームが2年近くかけて約500人を聴取するなどした結果、トランプ氏や政権の中心人物らが起訴されなかった事実は重い。

 疑惑捜査を巡っては、トランプ氏が「民主党による政治的な魔女狩り」と訴え続けたこともあり、直近の米紙の世論調査では「公正で正確だと十分信頼できる」と答えた有権者が過去最低の28%にとどまるなど、不信感が広がっていた。民主党は引き続き議会で追及を続ける方針だが、国民から「議論の蒸し返し」といった反発が生じかねない。

 ただし、政権を浮揚させたいトランプ氏にとって、ロシアとの関係は今後も問題の火種であり続ける。

 ロシアは捜査報告書でもインターネットなどを通じて選挙に介入したと断定され、次の大統領選への関与も懸念される。トランプ氏が共謀疑惑の「無実」を機にプーチン大統領との対話を進める一方、介入防止策など対策に消極的な姿勢を取れば、ロシアとの不透明な関係についての疑念が再燃する危険をはらむ。

   ☆    ☆

 疑惑捜査の内容次第ではトランプ氏の弾劾訴追につながるとの期待感も少なくなかった民主党は「打倒トランプ」に向けた戦略の立て直しが急務だ。

 捜査報告書の概要を公表したバー司法長官は、共謀疑惑に並ぶ争点だったトランプ氏の捜査妨害の疑いについて、十分な説明のないまま「証拠不十分」と結論付けた。反発する民主党は報告書の全面開示を要求しつつ、トランプ氏の行動を問い続ける方針。下院ではロシア疑惑捜査の対象にならなかったとみられる選挙違反や脱税といった、トランプ氏の公私にわたる問題の調査も本格化させる。

 こうした問題を捜査するトランプ氏の地元ニューヨーク州など司法当局の動きもにらみながら、トランプ氏包囲網を強めたいところだが、「米史上最大級の疑惑」とも言われたロシアとの共謀に比べれば、迫力不足は否めない。

 大統領選が近づくことも相まってトランプ氏と民主党との対立激化が必至の情勢の中、医療保険制度改革など国民の関心の高い政策の進展は望めず、米社会の混迷がさらに深まる事態は避けられそうにない。

=2019/03/26付 西日本新聞朝刊=

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