新貿易交渉、日米探り合い 15日から初協議

 日米両政府の新たな貿易交渉の初協議が15、16の両日、米ワシントンで開かれる。日本は「物品貿易協定(TAG)」の交渉と位置づけ、物品の貿易に限定した協議にしたい考えだ。一方、米国は農産品や自動車の市場開放に加えて、サービス分野も交渉対象とするよう要求してくる可能性がある。協議は難航が予想される。

■日本 農産品関税「TPP水準」

 日本は交渉範囲を物品の貿易に限定したい考えで、サービス分野を含めた包括的な自由貿易協定(FTA)には応じない方針。農産品の関税引き下げについては、米国を除く11カ国の環太平洋連携協定(TPP)の水準を堅持する構えだ。

 昨年9月の日米首脳会談の共同声明では、工業製品や農産物など物品の関税について交渉を始めることで合意。サービスやルール分野でも、早期に成果が見込めるものについては交渉することで一致している。

 初協議の最大の焦点は、どこまでを交渉範囲とするか。協議は議事録を残さない「ノンコミッタルベース」形式で行い「どこが譲れない部分なのか、お互いの腹の内を探り合うことになる」(日本政府交渉筋)。

 共同声明では農産品関税の撤廃・引き下げに関して、TPPなど過去の協定の水準を上限とするとしている。だが、予測困難なのがトランプ米政権の出方。共同声明を盾に防戦したい日本だが、トランプ政権が変心してTPPの水準を超える譲歩を迫ってくる恐れもあると警戒を強めている。

 米側には農産品での先行合意を目指す声もあるが、日本は夏に参院選を控えていることもあり、簡単には譲歩できない状況にある。

 自動車の扱いも注目点だ。対日貿易赤字に業を煮やす米側が、日本から輸入する自動車への追加関税や数量規制を迫る可能性もある。日本の交渉筋は「日本が農産品を市場開放して、米国が自動車を守るというのは道理に合わない」と強調、逆に自動車を含む工業製品の市場開放を米側に求めていく構えもみせる。

 サービス分野に関して日本側は、基本的に交渉対象から除外したい考え。ただ、税関手続きの簡素化など両国に争いがないものに限っては交渉に応じる方向で検討している。 (塩入雄一郎)

■米国 成果急ぎ圧力強化か

 米国は交渉の冒頭から、農畜産品の輸出拡大など早期の成果獲得を求めて日本側への圧力を強める展開が現実味を帯びている。

 パーデュー米農務長官は11日、日米交渉に関して農畜産品を念頭に「早期の暫定的な合意を望む」と発言。同分野の先行合意を求める意向を示した。背景には環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効により、米国産品が日本市場で不利な競争を強いられていることへの不満がある。

 トランプ政権は「米国第一主義」を掲げてTPPを離脱。結果、TPPやEU加盟国の牛肉や豚肉などの関税が引き下げられる一方、米国産品の価格競争力は低下し、対日輸出は早速、打撃を受け始めている。

 米経済の浮揚はトランプ政権の命綱。しかも農業や畜産業はトランプ氏の有力支持基盤だけに、再選をにらむ大統領選を来年秋に控え、早急に目に見える成果を挙げる必要がある。

 農産品の関税引き下げ幅について、米政権内には「TPPと同等か、それを超える水準」(パーデュー氏)を求める声が上がっている。昨年9月の日米首脳会談の共同声明ではTPPなど過去の協定水準を上限とする日本の立場を米国が「尊重する」としたが、米政府内では「トランプ氏は約束を平気でほごにする」との見方が根強く、予断を許さない。

 焦点の交渉範囲について、米側は「自由貿易協定(FTA)」と明言しており、物品以外のサービス分野や円安誘導防止のための為替条項導入など広範囲の要求を突き付ける可能性がある。さらにさまざまな分野で交渉を有利に進めるため、日本から輸入する自動車への追加関税や数量規制をちらつかせて大幅な譲歩を迫る局面も予想される。 (ワシントン田中伸幸)

=2019/04/14付 西日本新聞朝刊=

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