あの三筆は今…

 社会人になりたての大昔、職場に“三筆”と呼ばれる人たちがいた。本来の意味ではなく、その反対。雄弁なのに幼稚な字。スマートで仕事ができるのにミミズがはったような字。体格も態度もでかいのにちんまりした字。本人はコンプレックスだっただろうが、周囲はほのぼのとさせられた。

 手書きの機会が少なくなった今、他人がどんな字を書くのか知らず、興味もなくなっている。欧米ではもっと手書き離れが著しいそうで、「スクリプト アンド スクリブル(手書きと落書き)」の著者キティー・バーンズ・フローリー氏は「あなたのやしゃごは、あなたの手紙を手書き専門家に読んでもらうことになるだろう」と言っている。

 それでも日本には書道があり、手書きの文化は連綿と続く。現在、九州国立博物館で開かれている「王羲之(おうぎし)と日本の書」では、能筆たちの性格さえ見て取れる逸品が並ぶ。伊達政宗のいかにもだて男らしいおしゃれな書状もあった。比べるのははばかられるが、あの“三筆”のキャラクターも思い出した。 (井手)

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