FA放棄して西武一筋 栗山10年ぶり笑顔の奥に

リーグ優勝を決め、笑顔で握手を交わす西武・栗山(左)と中村
リーグ優勝を決め、笑顔で握手を交わす西武・栗山(左)と中村
写真を見る

 10年前、初めて優勝を味わった札幌ドームで、チームはゴールテープを切った。西武・栗山の胸に、さまざまな思いが去来した。「振り返ると10年、長かった。毎年、優勝するつもりでいたけど、10年かかってしまった。それでも、うれしい気持ちでいっぱいです」。選手会長、主将もやった。そうした立場は後輩に譲り、いち選手として再び、歓喜の瞬間を迎えた。

 8年前、ここで悔し涙を流してもいた。2010年。「とにかくぼうぜんとして」。その晩どう過ごしたか、よく覚えていない。「一気に力が抜けたっていうか。はー…っていう。それしか…優勝するとしか思ってなかったですから」。残り7試合でマジック4。頂上は目の前だった。それが敵地ソフトバンク3連戦3連敗から、チームは坂を転げ落ちていた。

 以来、優勝から遠ざかった。不思議なほど、胴上げを目の当たりにする巡り合わせも続いた。チームの成績と別に、西武グループ経営再建の過程で、身売りの話も降って湧いた。後藤オーナーは何度も「全力でサポートする、そんな(売却する)つもりはない」と言ってくれた。それは真実だったが、道中でチームの屋台骨は一本、また一本と抜けていった。

 前回優勝した08年から、10年間で10人がフリーエージェント(FA)移籍した。細川も帆足も、中島も片岡も。涌井も岸も野上も新天地を求めた。この10年で10人は、日本ハムと並んで12球団最多。自身と、同期の中村や、炭谷のように残留するのは少数派だった。

 「心のどっかで、来年もまた、おんなじメンバーで野球できるんじゃないかって。そう思ってたんです。でも、毎年のように、どんどん、出ていった。ああ、この一年は、このメンバーでしかやられへんのやなって。今いるメンバーで、来年いなくなってしまう人も、当然いるんだと」

 仲間たちの選択は理解し、尊重している。「やっぱり、大人の事情ですし。考え方もいろいろ。ここに入団して育った選手。絶対(球団に)愛着がないわけがない」。16年オフ、移籍の意思なくFA権を行使して残留。事実上、権利を放棄した。

 プロ17年目の今年は「来る人」にも価値観を変えられた。楽天から松井がコーチ兼任で古巣復帰。自身が兵庫・育英高から入団した頃は、雲の上の人だった。

 「稼頭央さんと一緒にやれるなんて思ってもみなかった。どうやって試合に臨み、試合に出てらっしゃるんかなって。人づてに聞く話じゃなくて、自分の目で見たいと思ってた。それがまさかの形で今年、かなって」

 2月の宮崎・南郷キャンプからじっと見ていた。「勝手に見てるだけですけどね」。特別ではない、だからこその驚きが胸にあった。「ほんまにフルメニューでやるんや…って。日々、全部の練習をちゃんとする。どっかのメニューを省いたり、そういうことって、出てくるじゃないですか。それがない」

 シーズンでも、ごくたまにシートノックを外れることはあっても、松井の練習の様子は変わらなかった。立場が上になると、律してくれるのは、自身の意識でしかなくなることがある。その意味で、松井は何も言わずとも、その姿でわが身を省みさせてくれた。「そのとき、そのときで全力でやってきたつもりですけど。どっかでね、抜いてきたことがあるんです。そうやって甘えないように、ね」

 本拠地で宿敵ソフトバンクに3連勝し、優勝マジック11が初点灯した9月17日。アベックアーチの同期・中村とそろい踏みのお立ち台で「情けない思いもしました」と漏らした。8連勝で滑り出したシーズン。自身は代打で開幕を迎え、初先発は13試合目だった。

 愛車のハンドルを握って帰宅する時間に、栗山は一人で沈思黙考する。「いろいろ考えます。今日は、こうやったな、ああやったなと」。それが、今年の春先は「今日も出番なかったな」「試合、出たいな」になった。

 「だんだんそれが、余計なことになってくるんですよ。『余計なこと考えてんなぁ』と思うけど、考えざるを得ない。でもそんなことも考えないとしたら、空気になるしかない。無理じゃないですか、そんなの」

 幸い栗山は、チームの好調を、素直に「助かった」と思える男だった。「これを力に変えるにはどうしたらいいか」。考え込むたちが直るわけでもない。帰りの車の中では、いくらでも悩んでいいことにした。「ユニホームを着たときだけは、素振りから、自分がこうやりたいっていうスイングだけをやろう」。そう線引きして、心の折り合いをつけてきた。

 何のために、ここまでやってきたか。「やるからには勝ちたい。優勝して、ファンのみんなに喜んでもらいたい。それは当然です。けど…」。栗山が突き詰めて考えるほど、単純な結論に行き着いた。

 「やっぱり、ライオンズが好きで。ライオンズで野球がやりたい。このユニホームで野球がやりたい。それだけなんですよね。今、そう思います」

 その思いで一日一日を積み重ね、至福の時は10年ぶりにやってきた。

=2018/09/30 西日本スポーツ=

西日本新聞のイチオシ [PR]

ホークス下剋上日本一!西スポ2018アーカイブス

西日本新聞のイチオシ [PR]