日本シリーズの流れを左右 ソフトバンク工藤監督の「勝負勘」

報道陣の取材に応じる工藤監督
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4回、中村晃の逆転打でベンチが沸く中、内川の肩を抱いて話しかける工藤監督
4回、中村晃の逆転打でベンチが沸く中、内川の肩を抱いて話しかける工藤監督
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4回、送りバントを成功させた内川に脱帽して一礼する工藤監督
4回、送りバントを成功させた内川に脱帽して一礼する工藤監督
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5回、丸に右越え2ランを浴びるモイネロ
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7回、明石に同点の本塁打を浴びたフランスア
7回、明石に同点の本塁打を浴びたフランスア
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8回途中から登板した森
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サヨナラ弾を放った柳田を抱きしめる工藤監督
サヨナラ弾を放った柳田を抱きしめる工藤監督
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 その即断即決は、コーチや選手の目にも際立って映った。1日、ヤフオクドームでの日本シリーズ第5戦。ソフトバンク工藤監督が繰り出した勝負手には外れも当たりもあった。動かしようのない事実は、最後に工藤監督が笑ったということだった。

 2回に1点を先制されたが、4回に無死満塁から中村晃の2点中前打で逆転した。ここで工藤監督は打席に向かう内川の肩を抱き、耳打ちした。送りバントを頼んだ。

 体調不良に右肩痛で戦列を離れていたキャプテンは、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージから復帰。日本シリーズでは前の打席まで打率1割6分7厘と本調子でなかったとはいえ、希代のバットマンの犠打は横浜(現DeNA)時代最終年の2010年が最後だ。

 ソフトバンク移籍後8年間を通じてなかったこと。この間、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表としても犠打はない。内川は初球ボールを見送って2球目、最初の試みできっちり決めた。工藤監督はベンチで帽子を取り、最敬礼で迎えた。

 もっとも次打者の松田宣も、前の打席まで打率1割1分1厘とこちらも調子は上がっていなかった。結果はボール気味の球に手を出して空振り三振。さらに今宮も倒れ、リードを広げるには至らない。

 指揮官は直後、5回の守りでも動いた。2死二塁、3番の左打者・丸を迎えたところで先発千賀に降板を命じた。勝利投手の権利まであと1アウトだったが、左腕モイネロへのスイッチを選択した。

 モイネロはレギュラーシーズン(RS)の被打率が対右1割6分2厘、対左2割2分9厘。左打者の方に打たれていた。一方の丸は、対右2割9分2厘、対左3割2分6厘。左腕を苦にしないどころか、右投手より打っていた。

 データにとらわれず、復調気配のあったモイネロの球威で、そこまで20打数2安打と不調の丸を封じ込めにかかった。だが3連投のモイネロの初球は、捕手の構えと思い切り逆の内角に外れる。2球目のチェンジアップも高めに外れ、ボール先行から3球目のストレートを打ち抜かれた。結果は最悪の右越え逆転2ラン被弾。ベンチは凍り付いた。

 裏の攻撃で柳田の内野ゴロの間に追いついたが、直後の6回に再び1点を勝ち越された。ゲームが落ち着かなくなった。裏の攻撃、2死二塁で捕手・甲斐に代打・長谷川勇を立てる。すると広島は左腕フランスアを送り込んできた。

 ソフトバンクは敵地での第1、2戦で、計3イニングを1安打に封じられていた。長谷川勇はバットを折られての一ゴロに抑えられ、フランスアは当然のように7回も続投。先頭の上林が空振り三振に倒れた。勢いのままマウンドを制圧しようとする左腕を止めたのは、次打者の明石だった。右越えの同点ソロで、試合は振り出しに戻った。

 明石はRSでの打率が対右2割7分6厘、対左3割1分3厘と左腕もよく打っていたが、それ以上にフランスアの被打率は対右2割7厘、対左1割5厘。普段のなら右の代打・川島を送り込んでもおかしくない場面ながら、そのまま明石を打席に送り込んだ結果だった。

 フランスアは150キロ台半ばを投げ込んでくる剛腕。工藤監督は、明石が左腕を苦にしない上に「真っすぐに強い」ことを買っていた。結果的に打ったのはスライダーながら、速球をファウルして粘って8球目のことでもあった。

 追いついて迎えた8回の守りで再び動いた。この回から登板のルーキー高橋礼が2死を取り、打席に会沢を迎えると、ストッパーの森を送り込んだ。テンポよく2死を取ったところ。延長を考えてもこの回を投げ切らせる選択肢は十分に考えられたが「今日は会沢のところがポイントになる」と迷いがなかった。

 2回の先制打、6回の勝ち越しソロ。勝負どころで会沢に打たれていた。ただ、この場面は2死走者なし。それでも会沢に出塁を許し、次打者の野間で攻撃終了となれば、9回の広島の攻撃は1番田中からの好打順になる。それを嫌ったという。

 期待通りに森は会沢を抑えた。続投した9回は田中にポテン右前打を許したが、先頭の9番野間を打ち取って1死とした後だ。菊池の犠打で2死二塁となり、丸の右飛は危ない当たりだったが3アウトチェンジ。そして延長10回無死から柳田が、前の回から続投していたストッパー中崎から右越えにサヨナラ弾を放ち、けりをつけた。

 指揮官は、試合後の勝利監督インタビューで「途中ちょっと失敗もありまして、ピッチャーには非常に申し訳ない思いがあった」とも漏らした。次々と繰り出される勝負手に、結局は選手が応え、接戦をものにしたソフトバンク。1敗1分けスタートからの3連勝で一気に王手をかけた工藤監督が、このまま笑うか。

=2018/11/02 西日本スポーツ=

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