愛されて34年 ファン手帳の魅力

西日本スポーツ

■公営競技界異例のサービス 
 プロ野球観戦なら選手名鑑、株式投資なら会社四季報は手元に欠かせぬ必須アイテム。ボートレースでは、それらに匹敵する全選手のデータ名鑑「ファン手帳」(年2回発行)を、34年にわたって無料で提供し、ボートレースファンの舟券購入をアシストしている。公営競技界でも異例ともいえる手厚いファンサービスはどんな経緯で生まれたのか。6月末に最新号「2015年後期版」が発行されるのを前に、誕生からの歴史をたどってみた。

■年2回無料配布

 ビジネス手帳サイズの小冊子に、現役の全ボートレーサー約1600人のデータがぎっしり-。これがファン手帳だ。

 選手の登録番号順に、顔写真、生年月日、身長、体重や、半年間の勝率、平均スタートタイミング、コース別の1~3着数…。そんなさまざまなデータが見やすくまとめられ、各選手の強さやコース別の得手不得手が一目瞭然。そんなまさに“バイブル”が、データが更新される半年ごとに各レース場などで無料配布される。ボートレース業界って、なんて大盤振る舞いなのだろう。

 記者や審判員など関係者にとっても必携のアイテム。振り仮名入りで「大豆生田(おおまめうだ)」「泥谷(ひじや)」など珍名さんの読み方もすぐに分かる。大レースの歴代優勝者といったデータも集約され、記事作成で助けられることもしょっちゅうだ。

■関係者らも必携

 今やそれほどに「あって当たり前」のファン手帳は、1981年末に発行の「’82ファン手帳」が第1号。当時、ボートレースの人気に陰りが見えたことから、全国モーターボート競走会連合会(全モ連=現在の日本モーターボート競走会)の月報「連合会会報」では「このままでよいのか。急激なファン離れ」との記事で、業界全体に危機意識を促していた。そんな中、新たなファンサービス品として生まれたのがファン手帳だった。

 発行に当たり、全モ連にあった思いは「ファンに喜ばれ、なおかつ積極的なレース参加(舟券購入)を促すような資料をファンサービス品として配れないか」。

 苦心したのがデータ量と小サイズの両立だという。全モ連は会報で「資料は幅広い方が良いが、総花的では面白くない。それを避ければ五、六百ページにもなってしまう」と発行前のジレンマを明かしている。結局、「ビジネス手帳風のコンパクトな体裁で、予算は単価150円以内」と設定。余白の縮小などの工夫を凝らし、第1号が生まれた。1冊当たりの原価は現在も約145円。当時のマインドは今も息づく。

■最新版間もなく

 前例のなかったこのサービス品は、ファンにどれだけ受け入れられたのか。その指標として興味深い数字が残る。それは第1号の「捨てられた率」。発行30万6500部に対して全国で11%。ただ、一部のレース場で高率だっただけで、福岡や戸田、住之江などではほとんど捨てられなかったという。いかにファンが重用したかが分かる。

 しかも「友人のを見たが、自分もぜひ欲しい。予備を譲って」との電話や手紙が、全モ連に何通もあったとか。現代では熱烈なマニアも増え、各レース場の入場客はもちろん、病気療養中で外出できない人からも発行を心待ちにする声が届くという。小さなサービス品だが、患者が日常生活に復帰するための励みにもなっているようだ。発行元の日本レジャーチャンネルは「新しいファン手帳を持ち帰ることに喜びを感じているお客さまが多数います」。

 歴代の手帳を見比べると、さまざまな微修正がされたと分かる一方、まるで別物との印象は受けない。扱うのが、継続性が重要な「データ」である以上、基本線を崩さないことも愛され続ける理由だろう。最新版は間もなく、各レース場の案内所などで配布される。

■カラフルな表紙 好みには男女差

 ファン手帳は毎号、表紙の色が変わる。発行する日本レジャーチャンネル(JLC)によると、「ボートの1~6号艇の色(白、黒、赤、青、黄、緑)を基本に、常識の範囲で自由に設定している」という。

 同じ緑でも黄緑だったり濃い緑だったり、赤系でもオレンジ色を使用するなど、飽きさせない設定。書棚に各号が並ぶとカラフルに彩られる。

 薄いピンクや紫を使用したこともあり、「女性や初心者ファンに好評でした。その代わり、男性には不評でしたが…」(JLC)。色の好みは、性別や世代間による差が大きいようだ。

■徐々に内容充実 顔写真全員掲載

 【内容の変遷】

 各項目とも記載内容は徐々に詳しくなってきた。コース別の成績は当初、2連対率(2着以上の確率)だけだったが、1、2着数の内訳が載るようになり、3連単導入後は3着数も記載。「1着タイプなのか、2着や3着が多いタイプなのか」といった特徴が分かり、舟券購入の参考になる。

 選手名の振り仮名は第3号で約200人に付けたのが最初。徐々に数を増やし、間もなく全員に振られるようになった。

 巻頭や巻末に、トップ選手への一問一答や、メモ用・収支表のページが設けられたこともある。

 現在では顔写真を全員掲載。新人をくまなくチェックしてイケメンの“青田買い”を図ろうという女性ファンもいる。


=2015/06/23付 西日本スポーツ=

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