判定基準 全国統一へ着々 SG審判委員制度開始2年目 選手の反応も上々「分かりやすい」 ボートレース

西日本スポーツ

事故が発生すれば、誰の責任か、それとも不可抗力なのかなど審判委員長が判定を下す(写真は一番下の選手が落水事故) 拡大

事故が発生すれば、誰の責任か、それとも不可抗力なのかなど審判委員長が判定を下す(写真は一番下の選手が落水事故)

ボートのビッグレースは選任の優秀な審判がジャッジしている(写真は7月に三国ボートであったSGオーシャンカップの優勝戦) 清水正一SG審判委員長(左)と古賀泰三SG副審判委員長。手に持った用紙に6艇の航跡図を書き留める レース時の審判委員の配置。中央2人がSG審判委員。両脇にはレース場の審判委員長(右端)と副審判委員長(左端)が配置され、SG審判委員を補佐する。主審室はひな壇状になっており、1段下に中央審判委員と信号審判委員が位置する(写真は三国ボート)

 甲子園球場で開催中の全国高校野球選手権大会は全国から集まった審判がゲームを裁いているが、公営競技のボートレースでも、選ばれた優秀な審判がビッグレースをジャッジしているのをご存じだろうか。2014年度にスタートした「SG審判委員制度」により、年間に8大会あるSG(スペシャルグレード)レースは全て、「SG審判委員」が最終判定を下している。ブレのない基準で裁くことで、レースをする側と見る側の納得度はアップ。より見応えがあり、ますます舟券購入の意欲が湧くレースの実現を陰ながら演出する。制度開始から2年目に入ったSG審判委員の2人に話を聞いた。

■“地域格差”解消

 SG審判委員は、日本モーターボート競走会(日モ競)の会長に任命された2人で構成する。資格は原則5年以上審判委員長の経験がある者で任期は1年(再任は可)。本年度は清水正一SG審判委員長(59)と古賀泰三SG副審判委員長(55)の2人。両者とも制度開始の14年度に続く再任だ。それまで清水さんは津ボート(三重県)で、古賀さんは大村ボート(長崎県)で審判委員長(以下、審判長)を務めていた。

 SG審判委員制度は、判定の全国統一を目指す施策の一環として導入された。審判の業務はボートレース創生期以来、都府県ごとに組織された「モーターボート競走会」が担当してきたため、レース場ごとに微妙な差異が生じているのが実情。2008年に全国各県の競走会が“合併”して日モ競に一元化され、人事交流も徐々に図られてはいるが、それでもまだ、各レース場の“伝統”は残る。

 どこまでがセーフでどこからが違反なのか-。同じルールブックの野球でも日米のストライクゾーンに差異があるように、それぞれで進化する部分があるのは避けられない面もある。とはいえ、選手にも観客にも分かりにくいのは事実。全国どこでも舟券が買える時代にあって、興行的にもプラスとは言い難い。

 そこで10年以上も前から、統一へ向けた議論が進められてきた。その中で「注目度の高いSGで審判長を固定して、まずはSGだけでも統一してはどうか」との話が持ち上がり、実現化されたのが今回の制度。各レース場の審判団6人のうち、SG審判委員の2人が最高責任者の審判長と副審判長に代わって裁くことで、SGの判定の統一化を図った。

 審判は無事に終わって当たり前という職業の性質上、制度導入の効果は見えにくいが、選手側の納得度が上がるのは確か。SG常連のトップスター選手の今村豊(54)=山口=は「誰が審判長でも裁定に従うのはもちろんだが、同じ基準で裁かれるなら、より分かりやすい」と制度を歓迎。

■全国の議論活発

 全国の審判委員の見識も向上。最終的な裁定はSG審判委員が下すが、その裁定までに報告等を行う各レース場の審判委員との議論は、裁定した後も活発に交わされており、清水さんは「会議ではなく実地なので、お互いの見解を共有しやすい。条文の解釈などの理解度も深まる」。そんなソフト面に加えて「全国を見ているおかげで『この機器はこう並べた方が見やすい』といった提案もできている」(古賀さん)。より良い判定を下せる環境の整備が、ソフトとハードの両面で、全国のレース場で日々進んでいる。

 この制度の中で2人があらためて感じるのは、選手への尊敬の念だという。「風向き、日差し、波…。裁く側でも各地で全く違うと感じるのに、選手はどこへ行っても同じように能力を発揮できる。さすがプロだ」

 もちろん2人も審判のプロ。制度開始からスムーズな運営を実現し、「ミスなく、誰にも迷惑を掛けずに終えるのが審判」(古賀さん)という黒子としての役割を確実に果たしている。

 ところで、いつの日か判定の全国統一が実現すれば、SG審判委員は不要になるのだろうか? 古賀さんは「実際に不要になるのかは私には分からないが、結果としてそれに近づいていければ…」。その時、SG審判委員は、業界の宿願の実現に寄与した永遠の黒子役となるだろう。

    ◇      ◇

 ▼SG スペシャルグレードの略。G1よりも上に位置するボートレースのグレードの最高峰。年間に8大会(3月クラシック、5月オールスター、6月グランドチャンピオン、7月オーシャンカップ、8月メモリアル、10月ダービー、11月チャレンジカップ、12月グランプリ)があり、優勝賞金は最高で1億円(グランプリ)。このほか、SG並みの全国規模で開催する「プレミアムG1」が年間4大会(4月マスターズチャンピオン、8月レディースチャンピオン、9月ヤングダービー、12月クイーンズクライマックス)あり、SGと同様に「SG審判委員」がジャッジする。

 ▼ボートレースの審判団 各レース場とも、審判委員長、副審判委員長、中央審判委員、信号審判委員、第1副審判委員、第2副審判委員の6人で構成する。審判委員長らは、大時計の上方に置かれた主審室で判定業務を行う。主審室は水面全体が一目で見渡せる造りになっている。

 6人のうち、第1・2の副審判2人はいわゆる「コーナー審判」で、ほか4人とは別室でジャッジ。1M(2M)を間近に見下ろす審判塔が仕事場で、主審室とのレース中のやりとりは無線を通じて行う。

 中央審判委員は、スタートにフライングがなく正常かどうかなどを判定。信号審判委員は、大時計や失格盤のスイッチ作動などを担当する。

 ▼審判の裁定 審判委員は着順の確定などの業務のほか、各選手のスタートからゴールまでの航法や、スタート前のコース取りの「待機行動」が、公正・安全に進められたかどうかを判定する。

 航法では、最も責任の重い「妨害失格」、得点から減点される「不良航法」、減点には至らない「厳重注意」「注意」などの裁定を下す。また、転覆や落水、沈没などの失格事故は、原因を特定し、「選手責任」(減点あり)か「選手責任外」(減点なし)かを明確に判定する。

 コース取りでは、「割り込み」や、自分に有利なように幅を広く取る「コース占有」などが減点対象の「待機行動違反」として裁かれ、航法と同様に減点に至らない厳重注意処分もある。

=2015/08/18付 西日本スポーツ=

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