内川主将男泣き 4番の仕事 初回先制V打

西日本スポーツ

 すべてが終わったわけじゃない。それでも両目の奥底から、何かがあふれた。それは4番、主将という重責を、一年間、自分なりにやりきった証しの涙だ。「我慢しなきゃと思ったけど、シーズン中にいろんなことを感じたし、考えたので」。歓喜の輪に歩を進めると、工藤監督の姿が目に入った。内川の涙腺はさらに緩んだ。顔をぐしゃぐしゃにし、ガッチリと抱き合った。

 優勝マジックを1とし、11日ぶりに戻ってきた地元福岡での試合。いきなり、1死一、二塁の好機で打席が回ってきた。「まずは先制点という気持ちで打席に入った」。誰もがこの日の優勝を期待し、信じる中での先制機。重圧は計り知れない。それでも中前へはじき返した。これぞ4番!の働きだった。

 不調を拭いきれずにいた8月の遠征中、食事に連れられた。誘ってくれたのは工藤監督だった。堅苦しくはなく、くだけて、腹を割った食事の席。「工藤公康」は、ミスを引きずり、ミスを重ねた若手野手の姿に、憤っていた。

 後日、ナインを集め、工藤監督の求める姿勢を伝えた。でも、その前に、頭を下げた。これまでの、自身の態度についてだった。

 「周りを寄せ付けない雰囲気にしてしまったのは、本当に申し訳なかった」

 見えを張らずに反省の思いを伝えた。「何かを伝えるのに、自分のことから話したほうが伝わりやすい」という思慮もあった。その思いが、どれだけ届いたかは分からない。それでも、主将として、一人の男として、考え抜いた跡が、そこにはあった。

 「この一年がどんな一年になるのか、まったく想像できない。恐らく、これまでのようにはいかない」。開幕前に抱えていた不安は、いまだ拭い去れてない。それでも、チームをけん引する立場として、前を向く。「今日の優勝はうれしいけど、通過点。喜べるのは今日まで」。重みのある、主将の言葉だった。 (石田泰隆)

=2015/09/18付 西日本スポーツ=

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